水の棺の少年

Boy in the Water

スティーヴン・ドビンズ / 早川書房 / 00/08/31

★★★★

これもまた恐ろしいが、最後がちょっと弱いか

 『死せる少女たちの家』のスティーヴン・ドビンズの作品。主人公の教育学者(教育管理学の実践派)が田舎の寂れた寄宿制の私立学校に校長として着任したところ、奇怪な事件が次々と発生する。『死せる少女たちの家』と同じく、ミステリとしてのプロットは弱いが、人物描写には並々ならぬものがある。とりわけ、衰退しつつある学校のぬるま湯の環境を壊したくないと願う教師たちと、新任の意欲ある校長の間の対立を巡る描写は素晴らしい。残念なことに、ミステリとしての仕掛けが前面に出てくる後半に入ると、そういった要素がうまくストーリーと連動しなくなってしまった。

 そういった欠陥にもかかわらず、この小説の殺人者の人物像にはオリジナリティと同時にリアリティがあって、最後まで興味が続いた。実際、後半では、殺人者が小説の主人公になってしまったという感じがあり、これはたぶん著者の意図的な仕掛けなのだと思われる。前述の、校長と教師たちの対立構造が弱くなるのもその仕掛けの一部なのかもしれない。そうだとすると意欲的な実験的作品。

2000/9/17

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