屍体配達人

The Profiler

ブライアン・フリーマントル / 新潮社 / 00/09/01

★★★★★

本格的な広域警察小説とでも呼ぶべきか

 ブライアン・フリーマントルが別名義で書いている、ユーロポールのプロファイラーのクローディン・カーターを主人公とするシリーズの長編1作目。これに先行して出たのが、連作短編集の『屍泥棒』だった。

 『屍泥棒』はあまり良くなかったが、この『屍体配達人』は、ヨーロッパという広い地域で起こる事件を担当するユーロポールという機関を巡る政治的な駆け引きを中心に据えたポリティカル・ノヴェルといった趣きで、結局のところチャーリー・マフィン・シリーズ(『流出』)ダニーロフ&カウリー・シリーズ(『猟鬼』)と同じものになってしまっているという言い方もできるのだが、面白いんだから文句を言うわけにもいかない。特に、アメリカにおけるFBIに相当するような機関の誕生したばかりの時期という興味深い時代設定に着目したところが素晴らしい。

 主人公が現場を回って証拠を調べるというタイプの警察小説とは違って、主人公が管理職であったり、本書のように現場から離れたところで活動する捜査官である場合には、どのような仕組みでドラマを作るかが難しくなる。とりわけよくある間違いは、主人公が本来の職務から離れて、現場に押しかけて捜査をするというようなプロットを無理矢理正当化する試みである。フリーマントルはさすがにそんなに素朴ではないので、現場に足を運ばずに捜査活動に貢献するプロファイラーの像をうまく作り出している。普通の意味での犯罪小説を期待する人はちょっと肩すかしのように感じるかもしれないが、私はとても楽しんで読むことができた。

 あと、フリーマントルにしては唯一の(かな?)女性が主人公である小説であるということも重要だろう。彼の女性観が現れているのかもしれないが、このシリーズの主人公はチャーリー・マフィンほど「頭が良くない」のだが、ずっと野心的で素直であり、ちゃんと出世街道に乗っている。非常に好ましい人物像を造型できていると思う。うっとうしい女性を主人公に据えたロマンスが大量に出版されている昨今では、一服の清涼剤となる。関係ないが、「一服の清涼剤」とはいったい何のことか?

2000/9/17

TRCの該当ページへ

TRCの該当ページへ

検索ページへ 目次へ 前へ 次へ