音の後進国日本

純正律のすすめ

玉木宏樹 / 文化創作出版 / 98/01/15

★★★★

非常に正しいのだが、やはり売れないのだろうか

 著者は作曲家・バイオリニスト。とにかく世の中の音、音楽のあり方に怒っている。駅で流れる音楽のこと、TV番組で流れる音楽のこと、JASRACのこと、平均律のこと。いずれも著者自身の経験と知識にしっかりと裏打ちされた正しい批判だ。しかし、この本はあまり売れないんだろうな。

 176ページから、『絶対音感』に関して、まだこの本が出る前に書かれた批判がある。

……一部紹介されたその内容は、ウソと、ひどい間違いと捏造で膨満した、非文化国家日本の恥の上塗りをするような、国賊物と噴飯物で、世の中にすさまじい事実誤認をばらまき、音楽の才能教育になだれ込むバカ母親がひれ伏すような害悪本だから、出る前にここに告発しておく。
私の本はそのあとに出るだろうから、極端なことをいうと、売り上げで負けるわけには行かないのである。

 で、ずばり売り上げで負けそうな気がするわけだ。実際にどうなっているのか知らないけれども。

 185ページ以降に、『絶対音感』のパステルナークとスクリヤービンのくだりについてのコメントがある。『絶対音感』では最後の方にこのエピソードに関する種明かしがあるのだが、この部分を読まずに書かれた玉木宏樹の批判は、まったく的外れだったと言える。しかし、だからといって『絶対音感』の正当さが増すというわけではない。実際、この種明かしの部分は意味不明というか、著者の最相葉月の解釈は間違いである可能性が高いような気がする(解釈の根拠が書かれていないので判断もできないのだが)。

 というような細かい点はおいといて、この『音の後進国日本』という本は、『絶対音感』に決定的に欠けていたフレームワークをしっかりと持っている。このフレームワークの中で、『絶対音感』の執筆のために行われた調査が行われていたらどんなによかっただろうという気がする。逆にいえば、『絶対音感』には、本書の著者、玉木宏樹が批判すべきような内容がそもそも書かれていないということもできる。

 本書には8cm CDが付属している。なかなか興味深い。のだが、面白くない(泣)。

関連サイト

著者のwebサイト このサイト、本に記してあったものだが、どうやら現在は存在しないようである。

1998/5/23

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