二十一世紀前夜祭

大西巨人 / 光文社 / 00/08/30

★★★★

個人的には楽しんだが、他人に勧められるかどうかというと問題

 1980年から1999年までの間に書かれた短い作品を集めたもの。かなり前にときどき書いていた寓話的な短篇、フィクションの形を借りたエッセイ風のもの、そして加藤典洋の『敗戦後論』に対する批判ということで話題を呼んだ「現代百鬼夜行の図」を含む評論的な文章が収録されている。

 寓話風短篇とエッセイ風フィクションはあまり面白いものではないし、評論的な文章にはあまり説得力がないが、読んでいて心地よい本であることはたしかだった。これはもう、その人のファンであるかどうかというレベルの話であり、どんなに内容のない文章であっても巨大な構築物の1つに見えてしまうというような読み方をしてしまうかどうかということである。まったくコンテキストから外れてこの本を読んだら、なんでこんなものが単行本となって出ているのか不思議に思うかもしれない。

 加藤典洋批判については、これはもうはっきりと「弱いものいじめ」だろう。加藤典洋の側について言えば、彼の論は大西巨人みたいな人がすべて死んだ、あるいは死につつあるという前提で怖々と口にしたものなのであって、大西巨人に(あまり論理的とは言えないがかなりの迫力のある)攻撃を加えられたら萎縮してしまうのは目に見えている。

 にしても、「あるレトリック」に引用されているような、「現代百鬼夜行の図」をメタフィクションとして捉え、「大西が行なっているのは、フィクションの内部に現実の要素を取り込むのではなく、逆に、現実の内部にフィクションを導入し、そのことによって、現実の総体が異化され、それなしには見えてこない別の現実性がおのずと語り出すような場を作り出すことなのだ」とする批評の安直さは哀しいし、それを自らの立場を強化する材料として引用した大西巨人にいくぶんなりとも幻滅したことは否定できない。本書の弱点は、あるとすれば、この部分である。

2000/9/24

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