悪魔の涙

The Devil's Teardrop

ジェフリー・ディーヴァー / 文藝春秋 / 00/09/01

★★

まあ普通か

 ジェフリー・ディーヴァー(『監禁』『眠れぬイヴのために』『ボーン・コレクター』)の1999年の作品。文書検査士を主人公とする『ボーン・コレクター』タイプの小説。

 『ボーン・コレクター』との決定的な違いは、主人公が健常者であるために、あちこち動き回れるということである。このため、『屍体配達人』の項で書いたような、現場に関わらない捜査官を主人公とした小説の犯す間違いを犯してしまっており、説得力は格段と落ちている。また、『ボーン・コレクター』の魅力の1つであった、主人公の手先として動く人間との間の緊張関係がなく、こちらではごく普通の男女間のロマンスになってしまっている。この2つのファクターのためにそうとうな違いが出た。

 『ボーン・コレクター』とこの『悪魔の涙』は、昔なつかしい「犯人と探偵の知恵比べ」を軸とする本格推理小説や探偵小説の究極形態である。ディーヴァーは明確にそういう理論づけを行っているだろうし、一種のパロディとしてこれらの作品を書いているのだろうと思う。こうした作品が成立しにくければしにくいほど、「探偵小説」なるものの終焉が明らかになるというような構造になっているのだ。こういう前衛的な態度は悪くはないのだが、できれば『静寂の叫び』のようなまっとうな路線の小説をもっと読みたいものだ。

2000/9/24

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