家族の名誉

Family Honor

ロバート・B・パーカー / 早川書房 / 00/09/15

★★★

相変わらずか

 ロバート・B・パーカーの、女性私立探偵を主人公にしたサニー・ランドル・シリーズの1作目。

 ロバート・B・パーカーのスペンサー・シリーズは、たぶん1987年の『蒼ざめた王たち』あたりで読むのをやめたのだと思う。スペンサー・シリーズは、7作目の『初秋』あたりまでは、たしかにコンテンポラリーなハードボイルド小説の中で非常に重要な位置を占めていた。しかし、熱心な読者のなかからも、徐々に「これはいくらなんでもまずいんじゃないか」という声が上がりはじめた。(1) 単にシリーズがマンネリ化したという説、(2) ロバート・B・パーカーがアホであるという説、(3) 翻訳者の菊池光がダメなんだという説などが囁かれたが、たぶんそのどれもがいくらかは正しかったのだと思う。

 このサニー・ランドル・シリーズは、新しい主人公を使っているという点と、翻訳者が奥村章子であるという点で、上記の(1)と(3)のファクターが変わっており、(2)の条件をテストするための対照実験になっている。実験の結果は、やっぱりダメだというもの。主人公が違っても本質的なところの嫌らしさはまったく変わっておらず、奥村章子が訳しても(菊池光よりはずいぶんマシだとはいえ)うっとうしいものはうっとうしいということが判明した。

 『男はつらいよ』のシリーズは、最初の2、3作は非常に面白く、また当時としては斬新な映画であった。しかし、あれだけ延々と作られたシリーズを全部フォローしたという人はそんなにいないだろう(特殊な事情でまとめて見たという人はそこそこいるだろうけど、リアルタイムで、本気で面白いと思って見た人、ということである)。毎回毎回、タコ社長の登場に笑えるか、寅さんの恋愛の哀しい結末に涙を流せるか、という問題である。ロバート・B・パーカーの場合は、登場人物たちのワイズクラックを本気でかっこいいと思えるか、主人公の身のまわりの数人の友人たちとの間に存在するしっかりとした絆に本気で感動できるか、精神的に自立したいんだが弱さもあって、その間で揺れる苦しい心なんてものに本気で共感を抱けるか、というような問題となる。はっきり言って、これらのテーマは、30年前ならともかく、いまとなっては洗練されたものとはいえず、素のままで提示して許してもらえるようなものではなくなった。

 もしかしたら50年後ぐらいには、偉大なるマンネリ作家、1つのテーマに固執して作品を作り続けた頑固な職人、みたいなコンテキストで再評価されるかもしれない。しかし、コンテンポラリーな読者がそれについていくのはしんどいのである。

2000/9/30

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