運命の輪

The Winner

デイヴィッド・バルダッチ / 講談社 / 00/09/15

★★★

たしかにページ・ターナーではある

 著者は『黙殺』"Absolute Powers"を書いた人(クリント・イーストウッド監督・主演の映画の公開に合わせて『目撃』と改題)。その後『全面支配』"Total Control"という小説を書いているが読んでいない。記憶では、デビュー作があまり面白くなかったので見送ったのだと思う。

 したがって本書は3作目。おっそろしく不自然なストーリーをぐいぐいと読ませるその力量は、たしかに並み大抵のものではない。「読者にやさしい」要素を適度に混ぜて(とりわけ本書では、主人公を助けるチャーリーの扱い)、まるで最初からハリウッドでの映画化を想定して書かれているような小説である。で、読み終わった後に残る感想は、「時間の無駄だったかも」というものだ。『極北のハンター』と同じく、「うまく書かれていて、読んでいる間はやめられないんだが、読み終わると虚しい気持ちになる」というパターン。

 細かいことを言えば、クライマックスが非常に不自然なので少し醒めた。小説としての整合性よりも、映画化したときの映像の面白さを考慮して作られているという感じがする。

 なお、悪者の組織が悪事を企んでいるというタイプのストーリーで、悪者の手先がバカすぎて、簡単に善玉に撃退されてしまい、ついに善玉が悪玉の本拠に乗り込んで対決するという事態に及んだ時点で、「お前、もうちょっと有能な奴を手下に選んでおけば、こういうことにはならなかったんだぞ」と悪玉に言いたくなってしまうというようなパターンはよくあるが(あと、「1回失敗したからとって、部下をそう簡単に始末していると、そのうちリソースが手薄になるぞ」とか)、本書ではそういう問題は発生しない。悪者が非常に有能であり、そいつが細かい仕事も手下に任せず自分でやるからである。これは『悪魔の涙』『屍体配達人』の項で述べた、「本来ならばマネジメント業務に専念するべき高い地位の捜査官が現場に出て行くことの不自然さ」の問題のコロラリーである。

 本書では、悪玉が自分で雑事をこなすことにそれなりの説得力はあったのだが、それを支えていた悪者の有能さが、クライマックスになだれ込むところでかなり揺るいだのが残念だった。まあ、悪者があんまり有能だとハッピー・エンディングに持っていけないので仕方がないのだが。

2000/10/7

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