殺人カップル

Jack & Jill

ジェイムズ・パタースン / 新潮社 / 98/05/01

★★★★

シリーズ最高の作品ではないだろうか

 プロファイリングができる黒人刑事、アレックス・クロスを主人公に据えたシリーズの3作目。1作目の『多重人格殺人者』が小説的トリックを存分に盛り込んだ驚くべき小説だったのに対し、2作目の『キス・ザ・ガールズ』は何か普通の精神異常犯罪者の話になってしまっていたが、この3作目の『殺人カップル』は1作目に回帰したようなおもちゃ箱。

 アレックスの刑事としての仕事はほとんど問題の解決に役立たず、ただひたすら事件の流れに身をまかせているだけという感じが面白い。

 この小説では2つの一連の事件が起こる。1つはワシントンの住宅地で子供を残酷な手口で殺していく連続殺人。もう1つはワシントンの有名人ばかりを狙って殺していく「ジャックとジル」のコンビによる連続殺人。前者が典型的な精神異常者による殺人であるのに対し、後者は高度なインテリジェンスを持つ計画的殺人である。この2つがどこかで交わるのかと思ったら、最後まで交わらないのだけれども(アレックスが捜査と解決に関与するという点を除いて)、この手法によって興味深い効果が実現している。それぞれの事件が、本のどのあたりで解決するのかが予測できないのだ。普通、小説を読んでいるとき、本の厚さの半分ぐらいのところにきたときに何かしら決定的な「証拠」が出てきたときには、それがレッド・ヘリングであることがすぐにわかる。その段階で事件が解決してしまったら、残りの半分で書くことがなくなると予想できるからだ。しかし、2つの事件が並行して進んでいると、そのどちらかが本の半分のところで解決されてしまうということも十分にありえる。というわけで、ジェイムズ・パタースンが得意とする「どんでん返し」が効果的に決まるのだ。パタースンはこの手法を明確に意識して使っているだろうと思う。頭のいい奴だ。

 もう一つ。この小説の「ジャックとジル」の方の計画的殺人は、陰謀小説の分野のプロットとしてきわめて興味深い。

1998/5/24

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