東欧の解体 中欧の再生

堀武昭 / 新潮社 / 00/09/15

★★★★★

きわめて面白い読み物

 『反面教師アメリカ』の著者が、中欧(ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー)について書いている本。社会主義体制が崩壊し、民主主義と市場経済が「注入」されて社会が大変動に見舞われた時期を、実務家の目で観察している。『反面教師アメリカ』と同様にきわめてエキサイティングな本だった。

 これらの国は、その歴史的経緯上、著者が好んでいる「知性を備えた政治的リーダー」タイプの知識人が大きな力を持っている国である。したがって本書の記述もこれらの知識人の活動に焦点が当てられており、混乱の中で民衆がどのように感じ、どのように行動していたのか、とりわけこれらの知識人にどのような感情的つながりを持っていたのかということは書かれていない。一番知りたいのはそのことではあるんだが。

 なお、諸大国の覇権争いのなかで翻弄されるこれら中欧諸国の混乱と生き残り戦略から、著者が日本人のための教訓として引き出しているのは、行動力のある知識人によるかじ取りが必要であり、それが可能になるようなインフラストラクチャを整備しなくてはならないということだ。そして先行きについてはかなり悲観的であり、それは自らが属している「財団」なる機関が日本で軽視されているという事情を反映した心情である。

 なお、「おわりに」と題されたセクション(249ページ)で、著者は1999年5月の米軍によるベルグラードの中国大使館誤爆事件が意図的な攻撃であったとする説をかなりの説得力をもって展開している。

2000/11/4

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