好きになってはいけない国

韓国J-POP世代が見た日本

菅野朋子 / 文藝春秋 / 00/09/30

★★★★

好感の持てる本

 タイトルの「好きになってはいけない国」は、韓国人にとっての日本のことを指す。著者は、写真から想像するにその警戒心を抱かせない人柄を利用して、韓国の若い世代(10代中心。上限30代まで)の目に、日本のサブカルチャーを通して日本という国がどのように見えているかを取材している。文化的後進国から先進国を見ることによって、先進国の住人は新たな発見をすることができるという趣向。

 この場合の「文化的先進性」は、安室奈美恵やジャニーズの方が韓国のアイドルよりも、また日本のマンガが韓国のマンガよりも(一部の人にとって)かっこいいということを指す。『日本に恋した台湾人』『東京コリアン純情日記』は、それぞれ台湾人と韓国人がこの現象についての思いを記していた。この2つには知識人の苦悩という普遍的な要素が入り込んでいたが、本書ではもっと普通の人々の考えと行動が描かれていてフィールドワークとしてしっかりしている。

 ただ、著者の視点には少し不満を感じる。全体的なトーンを代表している「最終章 予感」の最後の数節(249ページ)。

「日本は好きになってはいけない国」
「日本のものが好きでも日本のことを認めることにはならない」
韓国の若者世代である彼らが持つ、二つの日本。
私はソウルと東京を行ったり来たりしながら、彼らの複雑に絡み合った感情をほどく糸口をずっと探していた。どうしたらほどけるんだろう。どこからほどいていけばいいのだろう。
韓国の人の心の中には、常に"日本"がある。それは確かだ。私たち日本人が思っている以上に、韓国の人の心は日本を向いている。
「謝罪とかじゃなくて、日本の人にきちんと歴史を知ってほしい。みんな知らなければ何も変わらないでしょう」
私の中で最後までほどけなかった日韓のすれ違う思いの中に、ただひとつ鮮明に残ったのは、韓国の人たちの日本へ向けたまっすぐで真剣な眼差しだった。
そんな眼差しを、いったいどれだけの日本人が気づいているのだろうか。

 答えは簡単で、「ほとんど気づいていない」である。このことから、われわれはアメリカ人が日本をどのような感じているかを擬似体験することができる。韓国人の「歴史」へのこだわり―日本の反核運動。韓国でのJ-POPの流行―日本でのエルヴィス・プレスリー・ブーム。日本で活躍する韓国出身の演歌歌手―坂本九の『スキヤキ』。在日コリアンの芸能人―マコ、パット・モリタ。

 日本人にとっては、日本と韓国(およびその他のアジア諸国)との関係がどうなるかということ以上に、アメリカ―日本―アジア諸国との関係の中でどういうポジションを取るかということが問題となっており、日本は幸いにもいくつかの方向に行けるポジションを確保している。そして、20世紀前半にあまり芳しくない方向に行ってしまったことに対する反省が、日本人の韓国(およびその他のアジア諸国)に対する無関心を醸成したという因果関係はかなりあるわけだ。この点が、アメリカの日本に対する無関心とはちょっと違うところではある。

2000/11/11

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