経済成長がなければ私たちは豊かになれないのだろうか

ダグラス・ラミス / 平凡社 / 00/09/25

★★★★★

中学校の道徳の副読本みたいな

 タイトルは経済に焦点を当てているが、実際には非常に広い領域への言及があるモダンな理想的社会主義者(ととりあえず呼んでおこう)によるエッセイ。『憲法と戦争』に書かれていたような内容も含まれている。

 本書は、著者の「語りおろし」なのだが、テープ起こしをした人が異様に有能な人だったのか(脇坂敦史という人らしい)、非常に読みやすく、秩序立った本になっている。『私の「戦争論」』に似た強烈な印象を与える。

 内容は、中学教育の「道徳」とか「社会」とかの副読本にしても良さそうな、原理的、根源的、ラディカルなもので、同時に少しばかり浅薄でもある。理念は提示するものの、対抗理念との擦り合わせがない。もちろん、この人がそういうことをする必要はないのであって、個々の分野の専門家が理念に沿って具体案を出すというような意味でのグランド・セオリーである。しかし、『私は臓器を提供しない』の項でも書いたように、こうした理念は現実の変化の後追いとなって普及するという感じが強くする。つまり、この論理レベルでの理念自体には事態を変化させる力はないという感じが強くするのだ。

 だから、これは予言の書である、という風に位置づけるのが正しいだろう。で、「経済成長がなくても豊かになれるような社会」ってのは、遠未来SF小説で扱われるようなタイム・スパンじゃないと実現しないような気がする。

2000/11/11

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