大地震の前兆 こんな現象が危ない

動物・植物・気象・家電製品…に起こる兆候

池谷元伺 / 青春出版社 / 00/11/20

★★★

この本だけではわからないが

 地震のさまざまな前兆現象が、地下の岩石の破壊によって引き起こされる電磁波を原因とするものであると主張している。ここで言っている前兆現象は、ナマズが騒ぐとか、地震雲と呼ばれるような奇妙な雲ができるとか、電気製品に異常が生じるといったいわゆる「伝承的・逸話的」な現象のこと。本書は『地震の前、なぜ動物は騒ぐのか』(NHK出版)という本の「一般向け」バージョンらしく、非常に柔らかく書かれていてどれだけ信用していいのかわかりにくい。

 そういうメカニズムで起こる前兆現象はなく、逸話はすべて錯覚かサンプリングのバイアスであるとする態度が非合理的であることは言うまでもないが、著者のように、ありとあらゆるものを電磁波を原因とする前兆現象とみなすのもおかしくて、難しいものだ。しかし、こういうマージナルなサイエンスでの慎重派は、事態の前進にはあまり貢献しない。そもそも、慎重派には、事態がまだ進展していない段階では、一般向けの本を書く動機があまりないのである。

 なお、この手の前兆現象は、CSICOP的な人々が非科学的な思考の例として取り上げることが多かった。この種の人々は基本的に、物理学をはじめとするメインストリーム科学の発展の不足しているところを、心理学に押しつけるということをやっている。物理学が発展するにつれて、それまで心理学に押しつけられていたものは物理学に回収されるのである。

 巻末のリンク集より。

 e-PISCO。"Precursory quake-Information System by Citizen's Observation on Web"らしい。ちょっと怪しげな英語だが、「住民観察による前兆的な地震情報システム」という日本語もどこか変。

 著者のwebサイト

2000/11/11

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