「日本」とは何か

網野善彦 / 講談社 / 00/10/24

★★★★★

読みやすいのでお勧め

 講談社の「日本の歴史」シリーズの「00」という番号が振られたイントロダクション。全26巻が予定されており、第一回配本では本書と「01」番の『縄文の生活誌 旧石器時代〜縄文時代』が発行されたが、「01」の方はちょうど旧石器時代の発掘物の捏造騒動があったせいで、11月中に第二版が発行されるらしい。

 本書は基本的にこれまでの著者の本と同じ姿勢で書かれているが、さすがにリキが入っていて面白く、また他の本と比べても格段に読みやすく書かれている。網野善彦の本を読んだことがない人には初めての1冊としてお勧めだが、すでに読んでいる人にもフレームワークの整理という意味で役に立つと思う。

 なお、本書とは直接関係ない話。リベラルな政治思想を前面に押し出している網野氏だが、彼の主張のいくつかの内容を知って、それを反動的な歴史修正主義と思いこんだ外国人がいた。たしかに、戦後のマルクス主義的な歴史学に対する痛烈な批判は、マルクス主義者と、マルクス主義的な歴史観を無自覚に採用していた人々の反感を買っただろうが、別にその外国人はマルクス主義者というわけでもなく、たとえば単純に江戸時代の百姓の再解釈とか、日本の社会のなかで女性が果たしてきた役割だとか、そういった点での修正を、例の過去を正当化する反動的な修正主義だと思ったわけである。実際、網野史観は「そういうふう」に利用できるものであり、網野氏が自らの政治信条をいくぶんくどいと思われるほど繰り返すのは、これに対する警戒心の現われだろうと思う。

2000/11/11

 上の、「01」の第二版が発行されるというのは、私の勘違いだったようだ。事情を説明した小冊子を挟んで、そのまま販売が続けられた。

2001/5/3

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