一つの中国 一つの台湾

江沢民vs李登輝

楊中美 / 講談社 / 00/10/20

★★★★★

鋭い

 著者は日本在住の中国人で、現代中国研究センター代表。本書は、この人が中国語で書いた『李登輝vs.江澤民』という本の抄訳である。

 李登輝と江沢民という2人の指導者のそれぞれの国での足跡をたどりながら、台湾と中国の関係の変遷を描くという趣向の本。「英雄物語」的な政治ノンフィクションの臭いがするけれども、このケースに限って言えばかなり妥当なアプローチなのかもしれない。

 中国人のリアリスト的な知性というものが強烈に伝わってくる本だった。1990年代の何度かにわたる台湾海峡危機を扱った日本製またはアメリカ製のノンフィクション(『米中奔流』『同盟漂流』など)を読むときには、ぜひこれを併せて読むことをお勧めする。本書の解釈では、この危機の原因は、もっぱら、李登輝と江沢民の間で秘密裡に行われていた交渉における合意を李登輝の側が破ったことにある。両者の関係のなかで、江沢民はどちらかといえば人が良かったせいでだまされた人というポジションにある。

 編訳者のあとがきより引用(221ページ)。

しかし、日本語版のために新たに引用した戴國[火軍]教授の論評と合わせて読むと、もう一つの違った説明ができるだろう。長年李登輝の身辺にいた戴國[火軍]は、「李登輝政治」を念頭に置きながら、陳水扁に次のような忠告を発している。
「日本右翼民族主義者グループの路線に、陳水扁が万が一でも誤って乗ることはないものと期待したい。……日本右翼民族主義者グループと親交を一層深めることの危険性は、まともな有識者なら簡単に判別ができることだろう」
ということは、李登輝は「日本右翼民族主義者グループ」と親交を重ねるうちに「中国統一派」から「台湾独立派」に変わってしまった、と説明すべきなのだろうか。

 なお、著者は、中国本土で文化大革命世代の人々が権力を握る2004年頃までに、李登輝とタッグを組んで独立指向の外交政策を行う陳水扁の方針が激化すれば、台湾海峡危機が再び発生するだろうと心配している。

2000/11/18

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