日本経済に起きている本当のこと

糸瀬茂 / 日本経済新聞社 / 00/11/02

★★★★

日本経済関連の時評

 日本経済に関する時評。著者は外資系証券会社を経て、現在は学者。内容は「自民党の先送り体質の批判」という一言に集約できそう。内容はまっとうな自由競争導入派。

 本書は、テレビ東京の『モーニング・サテライト』という番組のサイトに1999年10月4日から2000年8月28日にかけて連載されたコラムをまとめたもの。webに掲載された文章をそのまま載せ、それに「後日談」が追加されている。これはwebと書籍出版の連係としては理想的な形だろう。しかし不思議なことに、本書に上記のサイトのURLは記されていない。何か配慮が働いたのだろうか。

 全体として批判的・絶望的な暗いスタンスだが、あとがきより引用(271ページ)。

希望はある。カギを握っているのは、IT革命だ。「IT革命が進展すれば、日本経済は活性化する」などと、政府のご託宣(絵空事)みたいなことを言っているわけではない。IT革命によって、正しい情報が、より早く、より広く共有されるようになれば、国民(有権者)は急速に覚せいし、その覚せいした意識がすごいスピードで伝播していく。
それでなくても、今日、日本の有権者は確実に目覚め始めている。第17稿「有権者が真剣に経済の勉強をはじめた」でも紹介したが、日本の行く末を真剣に危惧し、真面目に経済の勉強を始めた有権者が、全国で、確実に増えてきている。
ITをしなやかに使いこなす有権者たちが、愚かな政治家らにノーを突きつける日が、刻々と近づいているような気がする。その変化に、新世紀の日本の発展を託したいと思う。

 しかし結局のところ、有権者の選択肢は現状では「民主党への投票」しかないのである。

 なお、上記のサイトには、著者が食道がんの治療を受けていることが記されている。この「読書メモ」で取り上げていて、その後にがんで亡くなった人には、宮本政於(『官僚の官僚による官僚のための日本!?』)、宮脇檀(『男と女の家』『いい家の本』)、高木仁三郎(『市民科学者として生きる』)などがいる(もちろん他にもいるんだろうが)。

2000/11/18

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