エンダーズ・シャドウ

Ender's Shadow

オースン・スコット・カード / 早川書房 / 00/10/31

★★★★★

まあ仕方ない

 久しぶりのSF。特にプロパーなSFは『エンディミオンの覚醒』以来、ほぼ1年ぶり。

 本作は、オースン・スコット・カードの『エンダーのゲーム』の姉妹編で、あの本で描かれていたのとほぼ同じ時期を、エンダーの副官として活躍したビーンのPOVから描く「パララックス・ビュー」小説とでも言うべきもの。『エンダーのゲーム』を読んでいない人は、必ずあちらの方を先に読まなくてはならない。

 実験的な趣向でありながら、読むに耐える娯楽小説になっていることに改めて著者の力量を感じる。私がカードの小説を読んでいて一番驚いたのは、『アビス』のノベライゼーションが面白かったということだ。特に、主人公が妻を仮死状態にして救う場面の盛り上がりは凄いもので、ノベライゼーションを盛り上げることができるのなら、どんなものでも盛り上げることができるだろう、と思ったことだった。それがこの人の限界を定めているのかも知れず、振り返ってみればこの人のエッセンスは初期の短編集(『無伴奏ソナタ』)に出尽くしていると言えなくもない。

 本作は、ビーンがバトル・スクールに入ってからがさすがにいくぶん不自由になっている気がするが、その前のストリート・キッドとしての生活を描いている部分は、それだけで1つの優れた中編になりそう。フォトグラフィック・メモリーを持つ若者が軍隊に入るというプロットは大西巨人の『神聖喜劇』を連想させるが、もちろんその手ざわりはずいぶんと違う。

2000/11/25

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