外国語の水曜日

学習法としての言語学入門

黒田龍之介 / 現代書館 / 00/07/15

★★★★

エッセイとして面白い

 著者はスラヴ語系の研究者/語学教師。本書は語学教育というテーマを軸とする短いエッセイ群から構成されている。

 驚くような主張はない穏当な本だが、この人はエッセイストとしての才能があるらしく、いろいろなトピックをきわめて魅力的に語っている。Web上で公開されるようなコラムと同じマーケット・ニッチではあるんだが、レベルは高い。

 なお、288ページにヤン・スヴィエラーク監督の『コーリャ 愛のプラハ』の映画評がある。映画の中の、チェコ語とロシア語の類似点と差異を使ったジョークの意味を解説しているのだが、この映画を見た日本人の中でこれらのジョークを理解した人は何人いたんだろうか。『ユーゴスラヴィア多民族戦争の情報像』の著者は、テオ・アンゲロプロスの『ユリシーズの瞳』におけるセルビア語の使われ方を批判していたのだが、これもやはり普通の日本人には絶対わからないことである。こういうことを言っていては映画なんて見られないのはたしかなのだが、マイナーな言語/文化に通暁している人は、ダサい気がして嫌だろうけれども、映画に出てくるジョークやシンボルの文化的な意味を懇切丁寧に種明かしするタイプの文章を供給してもらえるとありがたい。

2000/11/25

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