まぐろ土佐船

斎藤健次 / 小学館 / 00/12/20

★★★

興味深い記録だが、なぜいまなのかという疑問が

 第七回小学館ノンフィクション大賞の受賞作品。フリーライターをやめてマグロ漁船に乗り込み、現在は居酒屋を経営している著者が、漁船に乗った経験のことを書いている本。ところどころ文章がおかしいが、全体として迫力ある記録である。

 ただし、著者が漁船に乗ったのは1970年代のことであり、乗ったのは3回で、うち2回はコックとして。記述は本人が直接に体験した出来事にほぼ限られており、そのことが本の迫力を強めているわけだが、同時に扱われているテーマの狭さと中途半端さを感じさせる原因ともなっている。この時期は、漁業の近代化が進行しつつあり、またマグロなどの遠洋漁業の制約が厳しくなってきた時期にあたる。こうした事情がいまどうなっているのか、昔はどうだったのかということは簡単に触れられているだけで、欲求不満を感じた。

 同じような不満を感じた本が『空と山のあいだ』だった。あの本も何かの賞を受けていたが、取り上げている遭難事故が時期としてもケースとしても中途半端なもので、なぜいまさらと思ったものだ。

2000/12/9

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