デスペレーション

Desperation

スティーヴン・キング / 新潮社 / 00/12/01

★★★

面白いがちょっと長すぎないか

 1998年に出版された単行本が文庫化されたもの。原著の出版は1996年である。

 Desperationという名前の、アメリカ中西部の砂漠の中の鉱山町で、警官が住人たちを虐殺し、通りがかりの旅人を誘拐監禁している。これに対し、捕われの身となった少年が立ち向かうという「神―悪魔」もの。

 実はスティーヴン・キングを読むのは久しぶりで、最後に読んだのが何だったのかも思い出せないが、1990年代に入ってからの作品は1作も読んでいないのはたしかである。このため、最近のキングがどうなっているのかよく知らないのだが、本書を読んで、手を出さないながらも薄々感じていたことを確認することができた。やたらに長いこと、そしてもはや翻訳不可能な領域に入っていることである。

 キングは自分の好きなことを好きな分量だけ書ける境遇になってしまったため、ストーリー進行の時間配分のバランスが失われている。そのようなバランスの失われた本を賞味するためには(それが可能だとすれば)、本書のようなエンタテインメント系の翻訳はもはや不適切である。また、本書のテーマである善悪の対立構造の幼稚さが、オリジナルに内在するものなのか、翻訳によって付加されたものなのかはわからないが、解説にあるような、「キングが作家としてはいうまでもなく、人間としても齢を重ねて成熟した」という評価は(本書を読んだ限りでは)ちょっと納得しにくかった。

 今回の教訓は「原著で読まないとわからない」ということに尽きる。

 なお、続けて読んだ『レギュレイターズ』の項も参照。本書と併せて、きわめて刺激的な実験的試み。

2000/12/16

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