IT革命? そんなものはない

柳沢賢一郎、東谷暁 / 洋泉社 / 00/12/21

★★

能力を超えたことをしているような

 著者の東谷暁は『経済再生は日本流でいこう』の人。柳沢賢一郎は三菱総研出身の人で、やはり洋泉社の新書yで『コンピュータはそんなにエライのか』という本を出している。本書は、『経済再生は日本流でいこう』のニュー・エコノミー論批判と、(読んでないけど)『コンピュータはそんなにエライのか』のIT革命批判を合体させたような対談形式のIT革命批判本。

 批判の対象としている「IT革命」なる言葉には多様な概念が含まれており、それぞれについて最もガードの甘い説を攻撃対象としているように思われるが、その攻撃の仕方がまたガードの甘いものなので困ってしまう。大前研一と反対のことを言っているが、議論のレベルは同じ、というような感触。

 「デジタル・デバイド」についての議論(60ページ)にはまったく同感。日本にアメリカのデジタル・デバイド論を持ってくるのは、「暴力団関係者と思われる犯人が、事務所のドアに拳銃を2発発射しました」というようなことがニュースになる日本の銃問題を、アメリカの銃問題と同じものとして論じるようなものである。

 インターネット関係の話については、この人たち、インターネットの効用に対して否定的なだけあって、あんまり使ってないんじゃないだろうかという印象を受けた。そして、この効用に関する主張も視野狭窄を起こしており、自分にとって効用がないものは他の人にもないと思いこんでいる。そりゃシンクタンクの研究員とかがインターネット上の情報のみをソースとして使っていたらまずいのは当たり前なんだが、みんながみんなシンクタンクの研究員やフリーライターではないことを忘れている。

 まあ全体として、突飛な楽観論に水を差すための突飛な悲観論。

2000/12/16

TRCの該当ページへ

検索ページへ 目次へ 前へ 次へ