イスラム・パワー

21世紀を支配する世界最大勢力の謎

宮田律 / 講談社 / 00/12/08

★★

完全にイスラムの側に立った本

 著者は中東現代政治を専門とする学者。本書はイスラム/ムスリムに関する解説本で、コンテンポラリーなトピックも多く取り上げている。はっきりとイスラムの側に立った記述で、客観的な本とは言いがたいが、「イスラムの原則的言い分」を知るには適しているかもしれない。

 『マーシャル・ロー』という映画は、アメリカでイスラム原理主義者によるテロが発生したため、大々的なムスリム抑圧が起こるというシナリオを、アメリカ的なPCの立場から描いた映画だった。ただし、あの映画で起こっていたことは、また実際にアメリカで行われていることは、宗教による差別ではなく、中東的な風貌をした人に対するレイシズムである。一方、『スリー・キングス』という映画は、湾岸戦争時のイラクを舞台に、アメリカによる中東政治への介入を(ちょっとだけだが)批判的に描いた映画だった。従来、アメリカ映画で扱われるイスラム/ムスリムはアメリカ黒人にほぼ限定されていたと思うが、最近になって新しい流れが生じてきたことは明らかだ。

 著者は、国際関係におけるアメリカの態度がイスラム諸国の反発を招いているとして、そのような関係にない日本が調整役として大きな役割を果たせるはずだと述べている。全体として、そういう政治的な意図をはっきりと打ち出している本で、下手に隠蔽していない分だけ良心的なのかもしれない。

2000/12/23

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