十歳の囚人

Criminal Appeal,A

D・R・シャンカー / 角川書店 / 00/11/25

★★★

設定に新鮮みはあるが

 著者のD・R・シャンカーはこれがデビュー作。裁判官助手の女性を主人公とするミステリ小説だが、リーガル・サスペンスではない。インテリが書いた娯楽小説のデビュー作らしく、設定とテーマはさすがに新鮮だった。

 主人公は、大柄の(おそらく美人ではない)女性であり、インディアナ州の田舎で育った白人として、黒人に対する人種差別が身体に染み込んでいる。もちろん本人はリベラルなインテリなので、人種差別的な感性を克服しようとするが、なかなかうまく行かない。こういう設定はたしかに珍しいと思うが、逆に言えばこの小説の売りはこの設定のみにあり、プロットも物語の語り口も平凡あるいはそれ以下である。年齢設定を度外視すれば、キャシー・ベイツが演じるのにぴったりの役柄と言えばわかるだろうか(本作の主人公は、ロースクールを出たばかりの26歳ということになっている)。

 女性が書く、女性を主人公とするミステリ小説の問題は、その主人公が(1) 美人であり、(2) キャリア・ウーマンであり、(3) 良い男になかなかめぐり合えず、(4) 民主党支持者で、(5) PCであり、(6) ワークアウトが好きだ、というような設定があまりに多すぎるということである。女性の(特に新人の)作家にとって、大柄の不細工な女を主人公とする小説を書くのはしんどい、あるいは書いても出版できないという事情があるのかもしれない(ちなみに本書の著者は男性)。

 やはりこの手の小説にありがちな、日常生活の雑事に追われていらいらし、「ああ、私ってなんて余裕がない生活を送っているのかしら! でも仕方がない、これが人生ね」的な独白は、美人のキャリア・ウーマンが発する場合と、不美人の裁判官助手が発する場合で、かなりその印象が違ってくる。それ以外のいろんな点でも、本書の主人公は一般的な女性読者が読んで共感しそうな行動をなかなかしない。一言でいえば、女性が主人公の非ロマンス小説を久しぶりに読んだという感じで好感を持った、ということだ。

 今後、スコット・トゥローのように化ける可能性があるので、今後しばらくは注目すべきかもしれない。

2001/1/6

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