イスラーム的

世界化時代の中で

大塚和夫 / 日本放送出版協会 / 00/11/20

★★★★★

エキサイティングな本

 『イスラム・パワー』は困惑するほどの(イスラム側に)偏った本だったが、本書の著者はフィールドワークも行う人類学者(社会人類学)なので、対象との距離が普通にとられている。イスラム(本書ではイスラームという表記を使用)を信仰する人々がどのような生活をして、何を考えているのかということを、自らのフィールドワークの経験をベースにして論じ、そこから現代的な「イスラーム的なるもの」というファクターを取り出す。これは近代化・西洋化にさらされたムスリムたちが、そこからの次の一歩としてイスラムに回帰するという概念。一度近代化をくぐりぬけているので、単なる保守反動ではない。この運動のリーダーや実践者には西欧流の教育を受けた人々が多い。そういうような立場から、「イスラム原理主義」と呼ばれるような運動の西欧(もちろん日本も含まれる)流の理解を批判することに焦点が当てられている。最後の方にはハンチントンの『文明の衝突』のコンセプトを批判する文章がある。

 著者のいう「イスラーム的なるもの」は、このところの日本の保守思想(「自由主義史観」)に似ているところがあって興味深い。そして実は、ハンチントンの『文明の衝突』論は、このような保守思想の勃興を折り込んでいるわけではある。著者はハンチントンの考え方を文明論ではなく国策論であるといって批判するが、これは最初からそのようなものとして読まれるべきものだと私は思っている(『文明の衝突』の項の最後のパラグラフを参照)。

 現代的なイスラムのあり方についての興味深い示唆が多い好著。

2001/1/13

検索ページへ 目次へ 前へ 次へ