神の狩人

Mortal Fear

グレッグ・アイルズ / 講談社 / 98/08/15

★★★★

優れているテクノロジー描写

 原書は1997年、訳書は1998年に出版されているちょっと古い本。セックス絡みのチャットやBBSを提供しているオンライン・サービスの会員を狙った連続殺人に、そのサービスのシスオペが気づき、犯人を追うというサイコ・スリラーである。

 本書の特徴は、コンピュータ・ネットワークのテクノロジーの小道具としての使い方がかなり良く考えられていること、そしてオンラインで行われるチャットの内容を小説のテキストとして大々的に取り込んでいることにある。小道具としてのテクノロジーについては、出版から4年しか経っていないのにすでに古く感じられる点がいくつかあり、この分野の難しさを改めて感じる。一方、チャットのテキストに関しては、リアリティの追求を完全に捨てて、この世界のどんなチャット・サービスでも行われたことがなさそうなきわめて複雑かつ高度な会話を描いている。後世の人が、こういうのが普通だったと勘違いしないことを祈る。

 サイコ・スリラーとしては、主人公のダークな側面が本人の行動を制約するというテーマをうまく使っており、連続殺人犯の行動の不自然さをそこそこ軽減させている。いくつかある意外な展開は、物語に現実みを与える方向に作用しており、『全面戦争』などのエリック・L・ハリーに似た資質が感じられる。つまり、意外な展開が人工的な印象を与えるのではなく、現実のランダムさを印象づける機能を果たしている。

 残念ながら翻訳があまりよくない。原文で読めばもっと怖いのかもしれない。

2001/1/27

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