料理人誕生

米国料理学院の秘密

The Making of a Chef

マイケル・ルールマン / 集英社 / 01/02/28

★★★

興味深いのだが、視点が中途半端か

 ジャーナリストの著者が、アメリカで最も影響力の大きい料理学校、The Culinary Institute of America (CIA)に体験入学したときの様子を書いた本。CIAは、料理長(要するにシェフ)のようなマネジメント・レベルの料理人の養成学校で、経営学におけるビジネス・スクールのようなもの。徹底的にマニュアル化された教育内容とそのカリキュラムの描写は実に興味深い。

 本書の問題は、著者の身の置きどころと視点が中途半端なところにある。CIAの学生のことを書きたいのか、カリキュラムのことを書きたいのか、教師たちのことを書きたいのか、それとも自分のことを書きたいのかが定まらず、それが本全体の構成を曖昧なものにしている。それ以前に、この人は取材をしたにもかかわらず、CIAのことをあまりよく理解していないんではないかという感じがする。学生や教師たちに疎まれながらも、それに気づかない鈍感さが透けて見えるという厄介な本だ。

 とはいえ、描かれているさまざまな対象は興味深く、面白い。おそらく本書で言及されているさまざまな教則本や教則ビデオの方が、本書自体よりも面白いんだろうと思う。料理という作業を、2年間という短い期間のなかで学生たちに教え込めるような形にいかにマニュアル化するかという問題はエキサイティングだ。なお、この点には『マクドナルド化する社会』の項で書いたことと通底するところがある。現代のレストランはすでに市民革命のときからファストフード化への道を歩み始めており、ストック(あるいは「だし」)の概念そのものが現代的な効率性の象徴なのである。また、『マクドナルド化する社会』の著者がマクドナルド化の条件として挙げていた「効率性、計算可能性、予測可能性、制御」は、CIAがターゲットとしている「美食」とか「グルメ」などのレベルにおいても、いやそのレベルであるからこそ、料理における絶対的な必要条件なのだ。

2001/3/3

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