復讐の残響

Blind Rage

デイヴィッド・ローン / 新潮社 / 98/06/01

★★

過剰な自意識がうっとうしい

 盲目の元音響技師ハーレックの、『音の手がかり』、『音に向かって撃て』に続くシリーズ3作目。

 このシリーズはこれまでも主人公の見せる過剰な自意識がうっとうしくてたまらなかったが、少なくとも盲目であり、音響技師であるという特性を活かしたプロットがあった。この3作目は、そのようなプロットがなく、普通のハードボイルド小説になっているのだが、そうするとこの分野での競争力がまったくないということが明らかになってしまった。

 法執行機関の構成員たちは、重罪の犯人であることがわかっているのに、その重罪の証拠がないために保釈されてしまう犯罪者、という興味深い要素があるが、実質的にまったく活かされていない。

 なお、翻訳が悪い。これが「生硬な翻訳」というものなのだろうか。特に会話が変。それだけではない。

 311ページ「仮りに、電話をかけてきた人間の声紋がすべて文字化されていて……」の「文字化」はきっとcharacterizeなんだろう。

 315ページ。「…もしも、かけてくる相手側にもコンピューターか何かの機能がつけてあったとしたら、それも私たちのほうにわかるか?」、「もし私たちが、ファックスか多機能のコンピューターか、あるいは、電子操作の電光板に接続していれば、信号変換の波で必ずわかります」。意味がわからん。これは原文がすでに意味不明である可能性があるけれども、「電子操作の電光板」はelectronic bulletin board (system)か? このすぐ後で、(ほんものの)野球場の電光板が重要な役割を果たすので、そちらに引きずられたのか? それから「もし私たちが……接続していれば……」は、"If we are connected to..."で、「つながった先が……であれば」なんだろう、きっと。

1998/6/7

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