日本映画スチール集 美人女優 戦前篇

石割平コレクション

石割平、円尾敏郎 / ワイズ出版 / 01/02/15

★★★★

貴重な写真集

 石割平(いしわり・おさむ)という人が収集していた写真のコレクションを収録している写真集。同じ出版社から他にもいくつか出ているが、これは戦前の美人女優篇。取り上げられている女優たちは、田中絹代、市川春代、入江たか子、川崎弘子、山田五十鈴、桑野通子、高杉早苗、水戸光子、花柳小菊、原節子、高峰三枝子、轟夕起子。それぞれについて1ページの簡単なバイオグラフィーがあり、あとは写真だけというかなりハードボイルドな構成。いまとなっては実に貴重な写真ばかりということになりそうだ。この時期になると、スチル写真の形でしか見られない映画がほとんどである。ブロマイドだと思われる写真もたくさん入っている。

 上記の、現代のわれわれが「中年女優」とか「お婆さん女優」として認識するような人々が、ぴちぴちの美人女優以外のなにものでもなかった時期の写真が満載されている。改めて思うのは、日本人、特に女性の顔がそんなに変わっていないこと、そして昭和初期の日本の「モダンさ」はかなりのものだったということだ。田中絹代の9ページの左上の写真などは、工藤夕貴のちょっと不意をつかれた写真だと言っても通るかもしれない。市川春代の41ページは、原宿を歩いている不思議ちゃんということで行ける。ただし和服姿とその化粧の写真はいずれも「大昔」のもので、これらのファッションはたとえば1950年代の時代劇と比べても古めかしいという感じがする。戦争期を経て、女性の和風の化粧に関する日本人の好みは大きく変わったのかもしれない。

 いまとなっては見られない戦前の日本映画を、せめて写真の形でも見たいという欲求のある人にとっては貴重な一冊。それ以外の人にとっては、ちょっとマニアック過ぎて、各女優について写真1枚で十分かもしれない。私はとりわけ入江たか子と轟夕起子の若い頃の写真に関心があるので存分に楽しんだ。

2001/3/17

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