悪徳の都

Hot Springs

スティーヴン・ハンター / 扶桑社 / 01/02/28

★★★★★

堂々たる傑作

 『極大射程』、『ダーティホワイトボーイズ』、『ブラック・ライト』『狩りのとき』に続くスワガー・シリーズの5作目。ただし、本書はベトナム帰りのボブ・リー・スワガーの父親アール・リー・スワガーの若い頃の様子を描いた作品で、ちょうどボブが生まれた時点でストーリーが終わる。父親のアールについてはシリーズ中で何度も言及されているが、特に『ブラック・ライト』では父親の死の謎の解明がストーリーの軸となっていた。

 舞台は、第二次世界大戦直後のアーカンソー州ホットスプリングス。戦争の勇者として太平洋戦争から生還したが、社会に適応できないでいるアール・スワガーが、ホットスプリングスの犯罪組織を壊滅させることを目的としたガーランド郡検察官直属の急襲部隊に参加する。その過程で、父のチャールズ・スワガーの死の謎も解明される。

 1946年の風俗描写をふんだんに取り入れて、歴史小説として真っ向から勝負しているだけでなく、その中で展開するストーリーも実に面白い。『狩りのとき』でも思ったことだが、それまでの作品を読んでいる読者の期待を上回る新作を発表していくこの人の力はやはり並み大抵のものではない。特に注目すべきなのは: スナイパーとしてのアイデンティティが強かったボブ・スワガーに代わって、海兵隊の下士官だったアールの万能型・接近戦闘型のスキルの描写。「謝辞」にも言及があるが、『ブラック・ライト』の1950年代からさらに遡った1940年代後半のアメリカ社会の描写。この時期を題材にとった小説や映画は相対的に少ないように思う。実在の人物の巧みな取り入れ方。特に"バグジー"・シーゲルとヴァージニア・ヒルは、ストーリー上も大きな役割を持たされている。ちなみにバリー・レヴィンソン監督の映画『バグジー』(1991)では、バグジーはウォーレン・ベイティ、ヴァージニア・ヒルはアネット・ベニング、そして本書ではちょっとしか出てこないけれどもミッキー・コーエンはハーヴェイ・カイテル、ジョージ・ラフトはジョー・マンテーニャが演じていた。

2001/3/31

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