都市の魅力学

原田泰 / 文藝春秋 / 01/03/20

★★★★

都市間の自由競争を唱える

 著者は財務省の役人。本書は、著者が都市に関して書いてきたエッセイをまとめ、大幅に加筆修正したもの。日本の代表的な都市の発展の歴史を素描する各論と、都市間および地方間の競争こそが個々の都市と地方の魅力を増すのであるとして、現在の地方分権のあり方、具体的にはシャウプの地方財政・税制を批判する。それが正しいかどうかは別として、「自由競争が地方の活性化をもたらす」という論理を唱える人が、具体的にどのような像を頭の中に描いているかを理解するのに重宝する本。

 さらに、都市の美観という問題にも踏み込んでいる。自由競争の下の方が、つまり都市開発が民間企業によって行われ、住民の流動性が十分に高ければ、都市は美しくなるという論理だ。

 どちらの論点も、自由競争下での「勝ち組」のポジティブなファクターが、「負け組」のネガティブなファクターを上回るので、全体として良いという論理に基づいているように思われる。だが、日本の都市に先進国型のスラム地域があまり発生してこなかったのは、自由競争が抑制されていたからだという議論も可能なわけで、本当のところどちらがいいのかよくわからない。いずれにせよ時代の流れは自由競争に向かっているので、日本の大都市のあちこちにスラムが発生するのは避けられないんだろう。

 なお本書の最後の方でちょっと言及されている、都市の美観の主観性についての個人的見解。都市開発の問題に絡めて、日本の街路に乱立する電柱が「醜い」という議論が昔からよく行われる。また、外観の統一が取れていない一戸建住宅がひしめいているさまを美しくないとする議論もある。しかし、安全性とか経済効率の論点を度外視すれば、著者が指摘するように、美しいかそうでないかはあくまで主観的な問題であるということを忘れてはならない。実際、私は乱立する電柱や統制のとれていない一戸建住宅の群れを、積極的に美しいとは言わないにせよ、醜いとは思っていない。

 電柱とか外観の不一致、さらにはマンションのベランダでの布団干しとか、町に氾濫するネオン・サインなどについて苦情を言う人は、ヨーロッパの都市中心部のアパートメント街とか、アメリカの郊外住宅地などを理想像としているのだろうと思う。そういうのを好む人がいても別にかまわないが、それを好まない人もいる。だからたしかに、役人主導の都市計画よりも、本書の著者が強く主張する民間主導型、消費者オリエンテッドな都市開発の方が個人的には安心ではある。

2001/4/19

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