ワシントン政治を見る眼

ポール室山 / 中央公論新社 / 01/04/10

★★★★★

必読

 著者はワシントンで法律事務所、ロビイング企業、PR企業などに勤めた経歴を持つ人。要するに、典型的な「ワシントンの住人」である。

 本書は、日本企業などを対象にコンサルティングの仕事をしてきた経歴を活かして(ということだと思う)、アメリカの政治がどのように動いているのかを解説する啓蒙書。著者の有能さが透けて見える、実に面白い本だった。ただし、(著者が何度も述べていることだが)アメリカ人にさえわかりにくいワシントンの政治状況を、なぜ普通の日本人が理解しなくちゃならないのかという疑問は残る。

 でまあ、アメリカでの活動をしている、またはこれからしようとしている企業の従業員にとっては役立つだろう。ロビイストとかPR会社の雇い方みたいな実践的なアドバイスも盛り込まれている。もう1つの、本書が役に立ちそうな人間のカテゴリーは、アメリカ製のエンタテインメント小説とかノンフィクションとか映画が好きな人である。なお、本書には図や表やリストが豊富に掲載されているが、これが滅法面白い。とりわけ74ページの「東部主要紙の社説とワシントンの代表的コラムニストの思想傾向」、149ページの「ワシントンの有力法律事務所」、152ページの「元議員の有力ロビイスト」、206ページの「上下両院議員の所属宗教」などは後々まで役に立ちそうだ。

 2000年の大統領選に関連する記述が充実している。著者は共和党寄りで、民主党寄りの情報が流れやすい日本のメディアに不満を抱いている(このあたりは『日本の危機の本質』などの副島隆彦と同じだが、こちらは地に足のついている人である)。そして、1999年の後半まで、今回の大統領選は両候補者の論点にあまり差が見られず退屈なものであるという評価がなされたこと自体が、大統領選への関心が低いことが利益となる民主党寄りのメディアによるパブリック・オピニオンの操作であったとしている。いずれにせよブッシュが大統領になった21世紀の始まりにあたって、この著者のコンサルティングの仕事はますます繁盛しそうだ。この本読んだら、誰もがこの人を雇いたいと思うだろう。見事なもんである。

2001/4/19

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