The Face-Changers

The Face-Changers

トマス・ペリー / Ivy Books / 98/01/01

★★★★★

驚くべきことだが、依然として面白い

 『蒸発請負人』『Dance for the Dead』『Shadow Woman』に続くジェーン・ホワイトフィールド・シリーズの4作目。出版は1998年で、翻訳はまだ出ていない。

 前作で結婚引退したジェーン・ホワイトフィールドが、とある事情から復帰せざるをえなくなる。シリーズ4作目ということもあってそうとう身構えて読み始めたのだが、いきなり衝撃的な導入部。よくもまあ、これだけ手を変え品を変え凄いことを考えつくものだ。

 本作では、ジェーンはこれまでとはニュアンスの違う状況に投げ込まれ、読者はジェーンの生業であった「蒸発したい人の手助け」という仕事を別の角度から眺めることになる。本シリーズは、この奇妙なビジネスの周囲に、1作ごとに異なるプロットの鉱脈を掘るという知的離れ技をやってのけている。

 個人的には、本作の一番の大元にある仕掛けは、普通のミステリ小説っぽくてあまり好みではなかった。実際、冒頭で提示された事実の恐ろしさと比べて、その種明かしと解決はちょっとばかり安易すぎる気がする。しかし、3人の逃亡者と、このシリーズに再登場する機会があるかもしれないFBI捜査官の描写は、そうした欠点を補ってあまりある面白いものだった。特に最後の方のFBI捜査官がからむアクションの描写には、シチュエーションそのものは地味だけれども、ジェーンのPOV描写を通してFBI捜査官の気持ちの揺れ動きを表現するという高度なテクニックが使われている。

 シリーズ最高作とは言いがたいものの、これまでで最大の危機に陥ったジェーンの苦悩がよく伝わってくる作品だった。このことは、このシリーズが「普通のミステリ」に近づいていることを示唆しているのかもしれない。

2001/4/26

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