Blood Money

Blood Money

トマス・ペリー / Random House / 99/01/01

★★★★

これまでとちょっと雰囲気が違う

 『蒸発請負人』『Dance for the Dead』『Shadow Woman』『The Face-Changers』に続くジェーン・ホワイトフィールド・シリーズの5作目。出版は2000年で、ペーパーバック版も翻訳もまだ出ていない。

 本作は、このシリーズのこれまでの作品とは雰囲気が違う。これまでの作品は、人間を蒸発させる「ガイド」という仕事のロジックそのものから物語のプロットを紡ぎだしていたのだが、本作はまったく違った要素(著者の『アイランド』を思い起こさせるようなもの)を取り入れ、ジェーンが仲間たちと組んでマフィアに大打撃を与える冒険小説のような内容になった。

 このシリーズのストイックな姿勢が好きだった私としては残念なところだ。また、本作の冒険小説的なプロットには、いくつか論理的に不徹底なところが見られる。他の作家の作品だったらあまり気にならなかったかもしれないが、完璧なロジックを組み立てるトマス・ペリーにしてはちょっとお粗末と言わざるをえないかもしれない。

 現時点で、このジェーン・ホワイトフィールド・シリーズはこれが最新作である。4作目の『The Face-Changers』でもすでに感じられたことだが、シリーズが普通のミステリ/冒険小説の方向にいってしまうのであれば、いっそのことこの5作目で終わってくれた方がいい。特に今回は、ジェーンはこれ以上「普通の生活」を続けていけないんじゃないかと思ってしまった。いちおうストーリー上は、一仕事終えて帰宅したジェーンが、平穏な暮らしを営むことができるという言い訳が用意されている。しかし、ジェーンの主観的立場からすると、そのような保証はいっさいないわけなので、自ら逃亡生活に入らないことが無謀であるような感じを受ける。

 まあしかし、『アイランド』を連想させる奇想天外な状況設定が面白いことは事実で、ジェーン・ホワイトフィールド・シリーズではない単独のユーモア小説にしてしまった方がよかったような気がする。

2001/4/26

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