原発被曝

東海村とチェルノブイリの教訓

広河隆一 / 講談社 / 01/04/10

★★

まあ日本製ドキュメンタリー

 チェルノブイリとスリーマイル島の原発事故の取材を行ってきた著者が、東海村の臨界事故に絡めて書いた本。この臨界事故に関するこの読書メモで取り上げた本には、他に『臨界19時間の教訓』『原発事故はなぜくりかえすのか』がある。前者は中立的な(そして結果的に国の原子力行政寄りの)立場からの初期のルポルタージュ、後者は原子力発電所に批判的な科学者の手によるものだが、本書の著者ははっきりと原子力行政に批判的な立場をとる民間人である。

 焦点の定まらない、典型的な日本風ジャーナリズム。ただし(相対的にマイナーな)資料が多数引用/紹介されていて、探索の出発点として役に立つかもしれない。

 なお『臨界19時間の教訓』の項で周辺住民の反応の鈍さについて書いたが、本書を読んだ印象では、周辺住民は本当に無知だったということのようだ。本書の著者は「市民運動家」タイプの人なので必然的に行政批判へと向かい、被害者に対しては同情的だが、個人的には自業自得の要素が多いように思う。今回の事故での被曝者を、たとえば厚生省の手抜きでHIVに感染してしまった人と同列に扱うのは、後者のカテゴリの人に対してフェアでない。アメリカの核実験場の近くで被爆した人や、チェルノブイリとスリーマイル島の事故の被害者と同列に扱うのもフェアではない。冷徹に聞こえるかもしれないが、日本の原子力行政のさまざまな問題点は十分に知られているわけであり、そのような状況下で東海村に住むこと自体に高いリスクがあるということを認識していてとうぜんである。そのような認識がなくてもしかたがなかった人々や、認識していても他に選択肢がない人々とは決定的な違いがある。たとえば旧ソ連の体制下の人民と、本屋に行けば関連書籍がいくらでも買える日本国民を同じように扱うのは、双方に対して失礼だ(本書がそういう立場をとっているというわけではなくて、一般論として)。

2001/5/3

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