裁判官を信じるな!

柳原三佳、松永憲生、寺西和史 / 宝島社 / 01/05/09

★★★★

まあ面白いエピソードが収録されている

 2001年1月に別冊宝島Realというムック形式で発行された『「困った」裁判官』を改題・改訂して文庫化したもの。

 裁判官に関するいろいろな話。『愉快な裁判官』の寺西和史が原稿を寄せており、また『裁判官は訴える!』の日本裁判官ネットワークへの言及もいくつかある。さらに、『アメリカ司法戦略』の項に書いたような司法改革への反対運動の文脈での中坊公平批判がある。執筆・編集を行っている柳原三佳という人は、自ら医療過誤訴訟の原告となった経験を持っている、独自の動機を持つジャーナリスト。

 本書で批判されている中坊流の司法改革は、不可避的な動きだと思う。寺西和史が主張するような裁判官の政治参加がどうなるかはわからないが、この2つの流れは共存不可能ではないはずだ。ただし、アメリカの例などを見ていると、最高裁が積極的に憲法解釈を行うというような事態は、2大政党下での政権交替が前提とならざるをえないように思う。『ワシントン政治を見る眼』は、行政の分野での政権交替と、任命された最高裁判事の任期(終身制だが)のタイミングのずれが、行政と司法のチェック・アンド・バランスを保証している様子を実際の例を出しながら説明していた。

 そういう深刻な話はともかく、PART 1の「トライアルエラー」が面白かった。特に血液型の話が興味深かったので紹介しておく(87ページ)。15年前に、埼玉県草加市の残土置場で起こった女子中学生の強姦殺人事件の裁判。少女の死体には、AB型の精液、唾液、毛髪が付着していたが、逮捕された6人の少年らにはAB型の少年は一人もいなかった。これについて、東京高裁の裁判官は1994年に、「スカートの精液は犯人のものとは限らない」とし、「乳房の唾液はA型の少女の垢とB型の少年の唾液が混ざってAB型の反応を示したものである」として、少年らが犯人であるとする逆転有罪判決を言い渡したという。そのため弁護団は、大阪市立大学で、「A型の垢とB型の唾液を混ぜてもAB型の反応は起こらない」ということを示す実験を行うはめになった。現在、最高裁に上告中らしい。このまま判例として確立されれば、AB型の人はチャンスである。

2001/5/10

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