「男」という不安

小浜逸郎 / PHP研究所 / 01/04/27

★★★

そこそこ

 「男」という問題を網羅的に論じる本。この著者の本は、他には『中年男に恋はできるか』『「弱者」とはだれか』『現代思想の困った人たち』を取り上げている。だいたい手厳しいことを書いているけれども、この人の本をときどきは買って読んでいるのは、この分野の著作家のなかでは最もまともな方だと思っていて、関心が持続しているからだ。

 この人の長所の1つは、いろいろなところに目を配り、他の人の著作を紹介・引用してくれることだ。この点で、『「弱者」とはだれか』は非常に役に立った。本書でも、「男」論、広くはジェンダー論や家族論を行うために、進化心理学から精神分析までの幅広い分野の文献を取り上げている。しかし私見を言わせてもらえれば、同じ本の中で進化心理学と精神分析がともに論拠として引用されているということ自体が、根本的な勘違いを示唆している。

 ただ、この本に限って言えば、論理の組み立てはそれほど重要ではなく、中年期の男である著者が若者と中年男性に向けて発するメッセージの方が重い意味を持つ。特に面白かったのは、「恋愛とは、愛という宗教のもとに行われる、女による男からの搾取である。まさに恋愛は壮大な収奪システムなのだ」と怒っている「まだ二十代の著者・竹中英人氏の『男は虐げられている』」という本の文章を引用して、それを諭しているところ(154ページ以降)。

たしかにこうしたエロスの原理を悪用して、女王様気取りで男を翻弄する女は多いかもしれないし、なにかと「女を立てて女にちやほやする」現代の風潮は、大した魅力を持たない女までもつけあがらせる結果を作り出しているかもしれない。男はその風潮に屈して、必要以上に「男はつらいよ」を演じているかもしれない。だが、男もまたそういう風潮を率先して支えていることのなかに、やはり男女の関係における拭いがたい非対称性が映し出されていることを忘れてはならない。
なぜ男は、竹中氏の言うところの「女による男の壮大な収奪システム」を支えてしまうのか。それは、エロス関係の基本において、そういう構造になっているからだとしか言いようがないのである。要するに、これはある程度まではしょうがないとあきらめるしかないのだ。

 これで竹中英人が納得するとは思えないが、(少なくとも著者の立場からすれば)これが誠実な応答であることは間違いない。若者向け雑誌の人生相談や呑み屋でのグチに酷似してしまうことの困惑も含めて、ちゃんと引き受けているという感じがする。

2001/5/10

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