「わからない」という方法

橋本治 / 集英社 / 01/04/22

★★★★

迫力がある

 帯には「著者初のビジネス書!?」とあるが、これまでの著者のエッセイとそれほど変わらない内容である。何かが「わからない」ということを意識的な戦略とするための方法論、みたいなもの。著者の本は、他に『宗教なんかこわくない!』を取り上げている。

 本書を読みながら、「80年代に面白かったのだが90年代に入って急速に魅力を失った著作家には、立花隆、蓮實重彦、柄谷行人、荒俣宏、橋本治などがいる」というようなことを書こうかと思っていたのだが、後半に入って著者の言う「地を這う方法」の代表例である『桃尻語訳枕草子』の執筆方法を説明するところまできて、やはりこの人は偉大であると再確認した。私はこの人の小説はほとんど好きではないし、編み物はしないから編み物本は読んでいないし、少女マンガをほとんど読んでいないからその分野での評論を読んでもちゃんと理解できてはいないし、『桃尻語訳枕草子』も買ったけれども途中で挫折したのだが、コンテンポラリーな、オリジナルな思想家としては随一の存在だと思っていた。でまあ、本書を読んで、『桃尻語訳枕草子』がその思想家の偉大な業績であることを初めてちゃんと理解した。読み直そうとは思わないけれども、あれは聖書翻訳にも匹敵するような重要な翻訳作業だったのだ。

 なお、本書で著者は『桃尻語訳枕草子』の一節を改訳している。原文は次のとおり(195ページ)。

夏は夜。月のころはさらなり。闇もなほ。蛍のおほく飛びちがひたる。またただ一つ二つなどほのかにうち光りゆくもをかし。

 『桃尻語訳枕草子』では次のようになっている(222ページ)。

夏は夜よね。月の頃はモチロン! 闇夜もねェ……。蛍がいっぱい飛びかってるの。あと、ホントに一つか二つなんかが、ぼんやりポーッと光ってくのも素敵。

 本書では次のとおり(197ページ)。

夏は夜よね。月のころはもちろん。闇もねェ……。蛍が多く飛びかってる―あと、たった一つ二つなんかがぼんやり光ってくのも素敵

 別巻の『平安桃尻語辞典』の執筆のために、こういう改訳を最初から最後までやり直さなくてはいけないとのこと。この新しいバージョンだったら、私にも読みとおせるかもしれない。

2001/5/10

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