一度なら許してしまう女 一度でも許せない男

嫉妬と性行動の進化論

Dangerous Passion,The

デヴィッド・M・バス / PHP研究所 / 01/05/23

★★★

やはりちょっとつらい

 ポップ進化心理学。著者には『女と男のだましあい』という著作もあるらしい。

 ここ1年ぐらい、進化心理学をベースにした人間の性差と性行動に関するポップ心理学の本が急に増えたという印象がある。この読書メモでは『なぜ美人ばかりが得をするのか』ぐらいしか取り上げていないが。ポップ度の低いものには『人が人を殺すとき』がある。

 本書は『なぜ美人ばかりが得をするのか』よりは隙が小さく、実際の研究の結果を中心に議論を組み立てているように見える。ただどうしても気になるのは、複数の文化を比較する研究もいくつかはあるにしても、ほとんどの議論の根拠になっているのはアメリカ一国での研究、あるいはせいぜい欧米とその影響下にある文化圏での研究だということだ。しかも、自文化中心主義だけでなく、自時代中心主義と呼ぶべき姿勢が見られる。著者の議論の多くのものが、現代のアメリカ人の行動が、これまでの人類の歴史の中で選択されてきた適応度の高いものであり、なおかつ、現代アメリカの社会でも適応的意義があるものであるというふうに持っていこうとしているように見える。日本やその他の文化にはもちろんのこと、当のアメリカの10年前、20年前、30年前のどの時代にも適用しにくそうな「研究結果」が散見される。

 なお、本書の目玉となる主張は、嫉妬という感情には適応的意義があり、それは現代アメリカの男女関係の中でも有効な機能を持っているということなのだが、ここから、嫉妬は病的な感情なので抑えなくてはならない、消さなくてはならないというような態度は良くないという結論がもたらされる。これはまあ、意味のある提言といえるかもしれない。

2001/5/24

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