日本社会を不幸にするエコロジー幻想

「環境にやさしい」が環境を破壊する

武田邦彦 / 青春出版社 / 01/05/25

★★

エッセイ

 著者は『リサイクル幻想』『「リサイクル」汚染列島』などで、リサイクル社会の問題を指摘している人。本書は、現代日本で暮らすわれわれが「環境にやさしい生活」を送るためには、どういう心構えを持てばよいのかを解く「生き方指南エッセイ」とでも呼ぶべきものだった。このタイプの本のなかではまともであることは間違いないが、「雨に濡れよう」とか言われてもねえ。

 第2章で、一般に「環境にやさしい生活」というイメージが付与されているが、実際には環境に悪影響を与えるタイプの観念をいくつか挙げている。「田舎暮らし」、「自然エネルギー利用」、「太陽電池」、「省エネ製品」、「洗剤/せっけん論争でのせっけんの擁護」、「CO2発生量の抑制」、「グリーン購入」。個人的には、くじらの保護に関連して『くじら紛争の真実』の項で、またリサイクルに関連して『ごみ行政はどこが間違っているのか?』の項で述べたように、一見して「非科学的」な観念が世の中に広まっている状態が、結果として良い結果を生み出すこともあると思っているので、難しいところではある。実際、「極左」の環境保護者/自然保護者は、表向きはそう言わないとしても、腹の底ではこのように思っていることが多いのではないかと推測する。いわゆる「環境に対する意識」を醸成することが、他の点で効いてくるということだ(もちろん本書の著者は、それが「効いていない」として批判しているのだが、長期的にどうなるかはわからないと言っておこう)。

 なお、上記のどの項目も他のファクターとのトレードオフがあって、簡単には結論を出せない。まあ著者は「幻想」を批判したいわけなので。

 「CO2発生量の抑制」について少し詳しく書いておくと。国単位でCO2発生量を論じると、生産の過程でCO2が大量に発生する商品については、国内生産をせずに輸入した方が発生量を抑えられる。その分は、(往々にして発展途上国である)生産国に転嫁されることになる。これは、他のさまざまな有害廃棄物に関して「ゴミの輸出」と呼ばれているような現象だけれども、多くの有害廃棄物が与えるインパクトが基本的にローカルであるのに対し、CO2については、ローカルな影響はあまりなく、むしろグローバルな問題(地球温暖化)が重視される点が異なる。他の「ゴミの輸出」が一般に先進国のエゴであると言われるのに対し、CO2についてはその逆の構図になるのは、そのためである。

2001/5/24

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