American Terrorist

Timothy McVeigh and the Oklahoma City Bombing

American Terrorist

Lou Michel,Dan Herbeck / ReganBooks / 01/01/01

★★★★★

凄すぎる

 1995年4月19日に発生したオクラホマ連邦政府ビル爆破事件の犯人であるティモシー・J・マクヴェイの伝記。著者らは1999年4月に初めてのインタビューを行うことに成功したジャーナリスト。長時間にわたる対話、数百通の手紙の交換、そして150人以上の関係者に対する取材をもとに、マクヴェイの半生を細かく再現している。なお、マクヴェイは有罪判決を受けて死刑を宣告され、今年の5月に処刑される予定だったが、検察側の法手続き上の手落ちが発見されて(証拠を十分に開示していなかったらしい)執行が延期された。

 ティモシー・マクヴェイの行ったテロリズムに関する著作の決定版と言ってよい。マクヴェイは法廷戦術上、自らの行動を公にすることを拒否してきたため、これまでにさまざまな臆測がなされてきた。冤罪説、背後で巨大な組織が動いていたのではないかとする陰謀説、マクヴェイは共犯者をかばっているのではないかとする共犯者存在説などである。本書の著者らは、マクヴェイ本人の言葉を引用し、緻密な取材を通してそれを裏づけているため、事実関係はこれで確定したと思われる。

 なお、FBIの犯罪科学研究所の質の低さを告発した本、『FBI神話の崩壊』は、その第6章でマクヴェイ冤罪説を示唆していた。本書にも告発者のフレデリック・ホワイトハースト(被告側証人として証言を行った)の名前と本のタイトルが出てくる。結果的に『FBI神話の崩壊』の冤罪説は間違いだったわけだが、事態はかなり皮肉なものである(336ページ近辺)。ホワイトハーストの論点は、マクヴェイが逮捕時に着ていた服から爆発物が検出されたことが検察側の重要な証拠の1つとなっているのだが、その証拠品の扱いがきわめて杜撰だったため、ラボ内で汚染された可能性がかなり高いということだった。一方、マクヴェイ本人は、その服を着ている間は爆発物を積んだトラックの荷台に入らなかったので、爆発物が付着したはずはないと思っている。しかし当然ながら、このことを法廷で利用する道はないのである(自分がその服を着て荷台に入らなかったとわざわざ主張することはできないというCatch-22的なシチュエーション)。

 本書は凄みのある本だった。ティモシー・マクヴェイが死刑囚監房に入れられるまでの経過それ自体がきわめて興味深いのはもちろんなのだが、それを記述する著者らの態度が実に冷静かつフェアで、調査の綿密さを含めてジャーナリズムの頂点をきわめているように思う。この冷静さとフェアさが、かえってこの事件にエモーショナルな入れ込みをしている人々の反感を買っているようだけれども、別にマクヴェイを美化しているわけではなく、淡々と事実経過を記述しているに過ぎない。amazon.comには、マクヴェイの言葉、特に自らの思想について語った言葉を文字通りに受け止めているという批判があるが(その逆の、マクヴェイに対するインタビューをそのまま手を加えずに掲載すべきだったという批判もあるが)、私にとっては、彼の言葉がどれほど真実で、どれほどが自己正当化なのかは読者の判断に任せるという姿勢が好ましかった。

 本に描かれているマクヴェイの半生と事件の経過に関しては、実に多くのことを学ぶことができた。特に良かったのは、1968年生まれのティモシー・マクヴェイの目に、1980〜90年代のアメリカ社会がどのように見えていたかがよくわかることだった。以下、いくつか覚え書き。

2001/5/31

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