デモクラシーの論じ方

論争の政治

杉田敦 / 筑摩書房 / 01/05/20

★★★★★

見事に書かれている

 著者は政治理論、政治思想史を専門とする学者。本書はデモクラシーという観念の内包するさまざま矛盾について、AとBという仮想的な論客が議論をするという対話形式の本。

 形式の点ではすっきりしていて非常によくできている。この種のものので、この読書メモで取り上げた中で一番エキサイティングだった『市場の倫理 統治の倫理』が、複数の人の間で行われる対話を発見的プロセスとして描いていたのに対し、こちらは政治的立場の決まっている2人の人の間の出来レースのディベートである。広範囲な論点が取り上げられるが、それぞれの争点においてAとBがとる立場には必ずしも一貫性がないような感じがした。これは本の構成をすっきりさせるための配慮であり、結果的にはこれで良かったのだと思われる。

 なお、このような議論を行うことがデモクラシーの基盤なのであるというメタな意味合いを持たせており、その点ではプロローグとエピローグの禁欲的な態度が非常に好ましい。高校の社会科の教材として非常に適しているような、教育的な本である。政治理論の瑣末なところになるべく立ち入らず、つねに現実の状況に立ち戻って議論を進めていく態度が良い。

 具体的な争点については、エピローグから次のパラグラフを引用しておく。

デモクラシーが安定するためには、制度化を避けることはできないものの、あまりに制度にこだわると、デモクラシーが圧殺されかねないこと。二大政党制のような二項対立的な枠組みで考えると、政治にダイナミズムをもたらすことができるが、すべてを二極的にとらえる場合には、視野が限定されてしまうこと。国民を単位とするナショナルなデモクラシーを整備するのは、デモクラシーを実効的なものとするために重要であるが、ナショナルなデモクラシーを絶対化すると、デモクラシーがエゴイズムとなって腐敗してしまうこと。代表制の導入は、デモクラシーを機能させる上で不可欠であるが、人々の直接的な参加なしに、デモクラシーが成り立たないのも事実であること、などが議論されました。そして、デモクラシーをまっとうなものにするために、憲法を始めとする国法と、国際的な条約やローカルなルールなどとをどう折り合わせるかも論じられています。

 その他、サイバースペースにおける討論、サイバースペースを使った投票などのトピックにも簡単に触れている。

2001/5/31

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