ブラックマスク

黒侠/Black Mask

Daniel Lee / リー・リンチェイ、ラウ・チンワン、カレン・モク / 1996

★★★★★

なにか日活アクション映画の生まれ変わりという感じの傑作

 リー・リンチェイ主演のアクション映画。監督のダニエル・リーはこれがデビュー作のようだ。

 痛覚の神経を切断することで作られた強力な秘密部隊出身のリー・リンチェイが、マスクを被って香港の街で神出鬼没の活躍をするというどうでもいいような物語が、けっこう真面目に語られていく。日活ヌーベルバーグの頃の日活アクション映画を思い出させるようなカット割りとストーリー運び。アクションの部分も、『ヒットマン』ほどではないにせよ禁欲的にできていて、特に「苦痛を感じない戦士」という設定をうまく活かして、リアリスティックでない動きに説得力を持たせようという試みが感じられる。ブラック・マスクが誘拐するカレン・モクが、『紅の流れ星』の松尾嘉代を思い起こさせる強力なキャピキャピ演技。そうやって見てみると、リー・リンチェイがときおり渡哲也のように見える。刑事役のラウ・チンワンの絡み方も含めて考えると、このダニエル・リーという人は『紅の流れ星』を見ているに違いない。

 最近の香港映画をちゃんと見ていないので確信は持てないのだが、この映画は新しい波の出現を感じさせる。香港の非アクション映画の「新しい波」は、往々にして日本製TVドラマかATG系統の青春映画の再生産のように見えるが、この『ブラック・マスク』は、フランスのフィルム・ノワール系統のヌーベルバーグから、日活アクション映画を経由した、芸術的アクション映画の幕開けを告げる作品なんではないのだろうか? ちょっと大げさすぎるかもしれないという不安はあるものの、いやほんと、この映画はドラマ部分も含めてやたら刺激的な犯罪映画なのである。

1999/12/4

IMDBの該当ページへ

検索ページへ 目次へ 前へ 次へ