イン&アウト

In & Out

Frank Oz / Kevin Kline,Joan Cusack,Tom Selleck,Matt Dillon,Debbie Reynolds,Wilford Brimley,Bob Newhart / 1997

★★★

どうもよくわからないコメディ映画

 監督のフランク・オズは、良く言えば安定した手慣れた感じ、悪く言えばまったく意外性のない映画を作る人なので、この『イン&アウト』についても、その予告編からある一定の予測をしていたのだが、それが完全に裏切られた。これがまた、心地よい裏切られ方と断言することもできないもので、いったいこの映画が何だったのか、見終った今でもよくわからない。

 以下、ネタバレ。

 映画スターとなったマット・ディロンが、アカデミー主演男優賞の受賞スピーチで、田舎町の高校教師である恩師ケヴィン・クラインのことをゲイであると発言したことによっててんやわんやの騒動が始まる。ケヴィン・クラインは婚約者のジョーン・キューザックとの結婚を間近に控えていたので特に困るのである。この映画の予告編からは、ストレートであるケヴィン・クラインがいろいろと苦労して誤解を解き、無事婚約者との結婚に漕ぎ着けるというような展開が予想された。

 のだが、実はこの発言の後、映画は異常な展開を見せる。マット・ディロンのスピーチの時点で、ケヴィン・クラインは自分がストレートだと信じて疑わなかったが、TVレポーターのトム・セレックによる強引なキスがきっかけになったのか、自分がゲイであることに気づいてしまい、ジョーン・キューザックとの結婚をキャンセルしてしまう。それが原因となって学校をクビになった彼の職を、クライマックスとなる卒業式で、町の人々が揃って自らがゲイであるとカムアウトすることで救うというのがハッピー・エンディングである。

 こういう風に書くと、いかにも現代風のpolitically correctなゲイ映画であると思うかもしれないが、実はぜんぜんそうではない。少なくとも、フランク・オズがそういう映画を撮るならば必ずそうするであろうような盛り上げ方が忌避されているという感があるのだ。たとえば、マット・ディロンがあのスピーチでケヴィン・クラインのことをゲイと言ったのかが最後まで明かされない。ケヴィン・クラインは自らがゲイであると気づいた後に、いきなり何も喋らなくなる。最後に町の人々が揃ってゲイであると宣言するのは奇妙で、彼らは嘘をついている(これは本物のゲイにもストレートにも失礼なことである)か、ゲイという言葉を再定義している(それならばケヴィン・クラインは結婚をキャンセルする必要はなかった)。これがフランク・オズの監督作品でなかったら、完全に脚本のミスとしか思えない奇怪な物語なのだ。

 まあ9割がた完全なミスなんだと思っているんだけど、何か深遠な意図があるんじゃないかという疑念が捨て切れない。

 なお、ジョーン・キューザックがさんざんな目に遭う田舎の女教師を熱演している。『隣人は静かに笑う』の静かな狂気とは対照的(公衆電話をかけるホープ・ディヴィスの後ろに立っていたときの表情には凄味があった)。また、デビー・レイノルズがチャーミングなおばあちゃんを演じていてよい。もともと彼女は最初からこういうおばあちゃんぽさが内蔵されていたような気がする。TVレポーターのトム・セレックのうさんくささもよいが、何ともバカっぽいハリウッド・スターを演じるマット・ディロンには驚かされた。『ワイルドシングス』でのクールさを考えると、ほんとに幅の広い役者になっていると思う。

 という風に、個々の役者の演技も、映画の細かい作りも完璧に近いできなのである。いったいこれはどういう映画なんだ?

1999/12/4

IMDBの該当ページへ

検索ページへ 目次へ 前へ 次へ