セックスの義務と権利

Scorchers

David Beaird / Jennifer Tilly,Faye Dunaway,James Earl Jones,Denholm Elliot,Emily Lloyd,Leland Crooke,James Wilder / 1991

★★★★★

演劇タッチの見事な映画

 日本劇場未公開。監督のデヴィッド・ベアードは初めて知ったが、あまり映画を撮っていない人のようだ。ルイジアナ州の田舎町を舞台にした、演劇的な脚本と演技のちょっとくどい映画で、映画の神様が憑いているんじゃないかと思う瞬間が何度もあった。

 映画のほとんどが、ジェームズ・アール・ジョーンズがやっている酒場と、リーランド・クルックの家の新婚夫婦の寝室の2箇所のみで進行する。酒場では、ジェームズ・アール・ジョーンズと、役者の夢が破れて飲んだくれているデンホルム・エリオット(1992年にAIDSで死去)、娼婦のフェイ・ダナウェイ、牧師の娘であるジェニファー・ティリー。寝室では父親のリーランド・クルック、娘のエミリー・ロイド、花婿のジェームズ・ワイルダー。この2箇所での出来事が交互に映されるので舞台用ではなさそうだが、洗練されたセリフ、無理な設定、難しい演技など、戯曲としての完成度のきわめて高い脚本。ルイジアナのケイジャン色を全面的に押し出している割には、デンホルム・エリオットとエミリー・ロイドが英国出身だというのが面白い。

 何よりも凄いのは、撮影当時20歳だったはずのエミリー・ロイド。幼い頃から父親に貞操を教えられてきた彼女が、新婚初夜に夫とのセックスを拒んでいるので、父親のリーランド・クルックが夫婦の寝室に乗り込んできて、夫と寝るように説得しようとするという何とも馬鹿馬鹿しい話なのだが、このエミリー・ロイドとリーランド・クルックのやり取りは腸がよじれるほどおかしくて、哀しく、美しい。二人とも天才。

 こちらの方があまりに凄いので、酒場での展開がいくぶん色あせて見えるのだが、デンホルム・エリオットとジェームズ・アール・ジョーンズの、さりげなく挿入されるショットでの表情に凄味がある。ジェニファー・ティリーは、ちょっとあまりに難しい役柄を背負わされたという感じだろうか。また、酒場の中でも照明に工夫が凝らされており、エリオットとジョーンズが場所を移るたびに、その顔に微妙な色の光線が当たるようになっている。

 これを見られたことを映画の神様に感謝したい。『バウンド』のヒットで、ジェニファー・ティリーの出演作品が過去に遡って発掘されてビデオ化されたものだと思う。

1999/12/4

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