カラー・オブ・ハート

Pleasantville

Gary Ross / Tobey Maguire,Reese Witherspoon,Joan Allen,Jeff Daniels,William H. Macy,J.T. Walsh / 1998

★★★

よく出来ているが、説教臭いのがきつい

 高校生のきょうだい、トビー・マガイアとリース・ウィザースプーンが、1950年代の連続TVドラマ"Pleasantville"の世界に入り込んでしまうというファンタジー。監督のゲイリー・ロスは、『ビッグ』、『ミスター・ベースボール』、『デーヴ』などを手がけている脚本家。

 脚本を手がけている映画からも推測されるように、ちょっとイデオロギー色の強すぎる作品で辟易するのだが、その点に目をつぶれば(それはなかなか難しいことなんだが)脚本が良くできている。しかし映画的手法の面ではいろいろと不満がある。

 TVドラマの世界に入ってしまうのがトビー・マガイア(『アイス・ストーム』。この映画でも似た路線の演技で良い)とリース・ウィザースプーン(良く知らない。この映画ではあまり良くないが、これは映画のせい)。ドラマの世界の中での両親をウィリアム・H・メイシー(非常に良い。普通の映画に出るとTVドラマっぽさがネガティブに働くことが多いのだが、この映画では映画っぽさが深みを与えているという変な力学)とジョーン・アレン(『アイス・ストーム』。この映画でもトビー・マガイアと親子を演じているわけだ。ちょっと厳しいが、これは映画のせい)。マガイアがアルバイトをしている飲食店で働いているのがジェフ・ダニエルズ(『ジム・キャリーはMr.ダマー』。同じ人と思えない! この映画ではちょっとピンと来ないが映画のせい)。町長がJ・T・ウォルシュ(『スリング・ブレイド』など。この映画ではちょっとピンと来ないが映画のせい)。

 これでわかるように、この映画の配役はかなり豪華だ。しかし残念なことに、このポテンシャルをフルに活かしているという感じがしない。特に不満だったのは、ストーリーの要を握っている「色」の使い方が映画的に美しくないということだった。特に、色が着いたジョーン・アレンが美しくない(ひょっとしたら白黒の方が美しい)のが致命的だし、リース・ウィザースプーンに色が着いても別に大して変わった感じがしないのはまずい(後者については、脚本のレベルでは、素晴らしい着想。エンディングに向けての展開も含めて、驚いた)。人物に限らず、白黒の世界のさまざまな物に着いていく色があまりよくない。というのも、それらが1950年代の色なのだ。

 おそらく映画製作の始めから、Pleasantvilleに着く色は1950年代の色になることが決まっており、それにかなりの力が注がれたのだろう。その結果、この映画はいくつかの美術賞を受賞、あるいはノミネートを受けている。しかし、この映画の根本にある1990年代と1950年代の価値観のずれは、カラーと白黒の違いではなく、時代の変化に起因している。したがって、白黒のPleasantvilleに色が着いても、そこにあるのは1950年代のカラー映画の世界なので、映画のテーマである「変化」がほんとうに生じたという感じがしないのだ。これは、監督のきわめて根本的な勘違いだと思うし、彼がよって立つイデオロギーの浅薄さが現れている部分だとも思う。

 まあしかし。こういう映画を見ていると、ほんとに日本は自由な国なんだなあと思う。

2000/4/9

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