陽だまりの庭で

Le jardin des plantes

Philippe de Broca / Claude Rich,Salome Stevenin / 1995

★★★★

難解な映画だ

 なんとフィリップ・ド・ブロカである。まだ生きて映画を作っていたとは、と驚いたが、1933年生まれだったんだな。『リオの男』(1963)と『まぼろしの市街戦』(1967)があまりにも有名で、もちろん私もこれらは大好きだが、それ以外にもデビュー作の『大盗賊』(1961)とか『おかしなおかしな大冒険』(1973)とか『ベルモンドの怪人二十面相』(1975)みたいな軽い感じのコメディが好きだった。それぞれクラウディア・カルディナーレ、ジャクリーン・ビセット、ジュヌヴィエーヴ・ビジョルドが、ジャン=ポール・ベルモンドの相手役となっている。なんと豪華絢爛なことか。

 そういうわけで、この映画がつまらなかったら私はひどく悲しんだだろう。幸いなことに、本作は大傑作とは言えないけれども、『まぼろしの市街戦』路線のシュールな佳作に仕上がっていた。何か信じられないぐらいに美しい映像でドイツ占領下のパリが描かれ、クライマックスに入って急激に異常なストーリーが展開したかと思うと、呆然とするほどあっさりと映画が終わる。展開上あってしかるべき場面を省略し、なくてもいいものを入れることによって奥行きを出すという離れ技。これを新人監督がやったら「脚本がボロボロだ」と言われるのは間違いない。大御所ゆえの余裕がもたらした前衛性ということなんだろうか。何かだまされているという感じがありもするんだが。

 考えれば考えるほど、これは腹黒い映画のように思えてくる。この老人、孫娘に向かってセックスのことばかり喋ってるエロジジイです。老いた妻はユダヤ人嫌いだし、孫娘が寄宿しているカトリック学校に対する敵意は強烈だし(夜のシーンで尼僧が脱衣するところのシルエットは凄かった)、娘はドイツ人とウェールズ人に向かって銃を向ける。シニカルな知的ユーモアという以前に、猛烈な悪意を糖衣で包んで提示してせせら笑っているんじゃないのか、ド・ブロカは。

2000/8/23

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