ブレア・ウィッチ・プロジェクト

The Blair Witch Project

Daniel Myrick,Eduardo Sanchez / Heather Donahue,Michael C. Williams,Joshua Leonard / 1999

★★★

思ったほど悪くない

 「ブレアの魔女」の伝説に関するドキュメンタリー映画を撮るために森に分け入った3人の若者が行方不明になり、彼らが撮ったビデオと16mmフィルムが発見された、という設定で作られている偽ドキュメンタリー(mockumentary)。低予算ながらも、インターネットを含む複合的なマーケティング戦略のおかげで商業的に成功した映画として有名になった。この映画については「ひどい」という噂ばかりが伝わってくるので、そうとうな覚悟をして臨んだのだが、思ったよりもずっと出来がよかった。

 偽ドキュメンタリーの手法に関して。この映画では、ビデオ・カメラと16mmの白黒カメラの2つの系統の映像が使われており、音声については、DATで録音しているという設定があるにせよ、映画で流れる部分はすべてビデオのトラックに入ったものである、ということになっているようだ。で、この映画には、若者たちが残した映像と音声を再編集し、たとえばビデオと16mmの映像を交互に写しながら、そこにビデオの音声を一貫して重ねるみたいな編集を行っているところがある。この「おかしさ」は、とりわけ最後のクライマックスのところで問題となる。もちろん、若者たちが残した映像と音声を、誰がどのような方針で再編集したのか、という根本的な疑問は最初からあるわけだが。

 演技の不自然さについては、素人は一般に「不自然な演技」に見える振る舞いを素ですることがあるということ、またこの映画の構造上、若者たちはビデオ・カメラでつねに撮影されているわけだから、カメラの前での演技を強制されているということに留意する必要がある。その他の、カメラの揺れとか粗い映像などの「問題点」も含めて、あらゆることに言い訳が可能なように、この映画は作られているのである。これがまあ嫌味なところなわけですな。映画についての映画は、別にこのようなチープな学生映画に限らず、すべてこのような嫌味なものを本質的に抱えている。個人的には、ビデオ・カメラの映像はともかく、16mmフィルムの映像はもうちょっとマシでも良かったんではないかと思うが、これもまたカメラマンが下手であるという言い訳が最初からついているわけだしなあ。

 でまあねえ。この映画は、「ブレアの魔女」よりも映画製作のホラー・ストーリーなわけだ。こういう3人が森に分け入って映画を作ろうとすると、別に魔女がいなくても、恐ろしいことはおこりえる。たぶん作者はそういう意図のもとでこの映画を作ったのだろうし、それがまあ嫌味なところなんですな。私はこういう映画は本質的に「逃げ」であり、よくないと思っているが、そういう中で、本作はまだまともな方だと思った。ちょっと大胆な発言になるが、トリュフォーとかゴダールとかヴェンダースなどのラインの人々の「映画についての映画」に比べると、少なくともこの課題に対するアプローチはずっとクレバーである。結果として得られた映像が美しいかどうかは別にして、インテリジェンスの問題として。

 あとまあ、評判の悪い女性の演技。ああいう人、実際にいます。ブレアの魔女以前に、ああいう人のスタッフとして働かざるをえなくなった男2人の恐怖って実によくわかってリアリティを感じた。これはたとえば『プロデューサー』のケヴィン・スペイシーなんかよりもずっとリアルである。

2000/9/8

IMDBの該当ページへ

検索ページへ 目次へ 前へ 次へ