13F

The Thirteenth Floor

Josef Rusnak / Craig Bierko,Gretchen Mol,Vincent D'Onofrio,Armin Mueller-Stahl / 1999

★★★★★

よく出来ているが、何か一つ足りない

 監督のヨーゼフ・ルスナックはドイツでTVものなどを撮っていた人。ドイツ人だろうから名前はドイツ語読みにしておく。

 仮想現実もの。原作はダニエル・F・ガロイー(Daniel F. Galouye)という人の小説で、これが非常に良い小説だったのだろう、ストーリーがとても巧妙に作られている。この映画の良い点は、仮想現実ものにありがちな、「現実への非現実の侵蝕」をシュールリアリスティックな映像で描くという罠にはまっていないところにある。仮想現実の描かれ方はぎりぎりのところまでリアルであり、非現実性は映像そのものの性質ではなく、脚本と演出によって表現される。これは作者の意図だろうし、またストーリー上の要請でもあったわけだが、いずれにしてもこの意識的な態度が心地よかった。

 そういうわけで、この映画は地味なのだけれども、その自己抑制が行き過ぎてしまったという感もなきにしもあらずである。最近見た映画の中では、『スパニッシュ・プリズナー』を思い出した。あの映画も、渋い映画を撮ってやろうという極度の自己抑制のせいで、本来映画が持っていてもいいはずの映画的な豊かさが削ぎ落とされてしまっていた。この『13F』は、あれよりは豊かであるけれども、ストーリー上の重要な要素と映画的な豊かさの場面が連動していないという感じを受けた。特に主人公のロマンスの要素が弱すぎる。というか、ここはもっと盛り上げてくれよ〜、少々ださくても許すからさ〜、という感じなのである。

 主人公を演じるクレイグ・ビアーコは、『ザ・サバーバンズ』で無軌道なキャラクターを演じていた人。シミュレータのエンジニアを演じるのはヴィンセント・ドノフリオ(『フィーリング・ミネソタ』)。社長を演じるのはアーミン・ミューラー=スタール(『ミッション・トゥ・マーズ』『聖なる嘘つき/その名はジェイコブ』『ゲーム』)。この3人は、この映画の性質上、役者冥利につきるようなシーンをいくつも与えられており、それぞれに素晴らしい。クレイグ・ビアーコも良いが、後の2人はさすがにベテランだ。ヒロインのグレッチェン・モル(『ラウンダーズ』)は今後注目。前述の抑制の強さもあって、上の3人と比べると見せ場を貰えておらず、この映画の弱い環の1つだ。この人がキム・ノヴァクのように扱われていたら、この映画は大傑作となっていただろう。惜しい。

2000/10/4

4点だったのを5点にアップグレードした。音声解説トラックを含めて5回見たのだが、見れば見るほど愛おしくなってくる。もはや冷静な判断はできていないということを承知の上で、5点を与えることにする。なお、これだけ繰り返して見ると、ヒロインのグレッチェン・モルも良く見えてきた。

DVDメモ。日本版。

 予告編、CG処理のBefore & After、監督と美術監督による音声解説トラック。

 この音声解説は非常に良い。この映画のいくぶん「ダサい」ところをすべて製作のローランド・エメリッヒや、テスト上映での観客のせいにしているのがなかなか笑える。ちなみに、解説では監督の名前を「ジョゼフ」と発音していた。ローランド・エメリッヒは「エメリック」だった。

2000/11/7

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