夕べの星

The Evening Star

Robert Harling / Shirley MacLaine,Bill Paxton,Juliette Lewis,Miranda Richardson,Ben Johnson,Marion Ross,Donald Moffat,Jack Nicholson,George Newbern,MacKenzie Astin / 1996

★★★★

これは良い

 『愛と追憶の日々』"Terms of Endearment"(1983)の続篇。監督のロバート・ハーリングは『マグノリアの花たち』の原作となった戯曲の作者であり、『ファースト・ワイフ・クラブ』(駄作)の脚本を書いていて、監督はこれが第1作。前作で死んだデブラ・ウィンガーの子供たちをシャーリー・マクレーンが育てており、孫たちの成長に伴い、本人も老いを迎えるという話である。『愛と追憶の日々』は(記憶もずいぶんと薄れているのだが)いくぶん鬱陶しい映画だった。本作は、前作よりもずっと軽いタッチの別の映画と考えた方がいいだろう。今回の目玉は、ずばり老いたシャーリー・マクレーンのキュートさである。

 シャーリー・マクレーン(『不機嫌な赤いバラ』、『マグノリアの花たち』)は、本作の公開時には62歳。ビル・パクストン(『シンプル・プラン』『マイティー・ジョー』)との、今では問題にならないが、1940年代だったら検閲されていたであろうようなベッド・シーンがあり、寝間着姿で豊かな胸の谷間を強調するセクシー・ショットがある。この映画はそういう映画なんであり、それ以外の要素はすべて添え物であると言い切ってもよいだろう。人情物のふりをして、巨大なテーマに取り組んでいるのである。

 孫娘を演じるのはジュリエット・ルイス(『カーラの結婚宣言』)。途中で気づいたのだが、この人はデブラ・ウィンガーと似ているところがあるという理由で起用された可能性がある。両者が似ているという発想は、デブラ・ウィンガーのファンである私にとっては受け入れがたいのだが、表情がときどき瞬間的に似るだけでなく、声の質も近いように思われる。まあ、これはおばあちゃんの映画なんで、孫たちは、長男のジョージ・ニューバーン(『花嫁のパパ』シリーズで婿を演じた人)と次男のマッケンジー・アスティンも含めて添え物でしかない。デブラ・ウィンガーの友人で、彼女の死後、母親の代わりを務めてきたという設定のミランダ・リチャードソン(『第一の嘘』『スリーピー・ホロウ』)は美しい。

 因縁話めいた部分は、シャーリー・マクレーンの同年代の友人たちにある。以下、ネタばれ。この映画では、彼女の魅力に引き寄せられている老人たちのうち、まず「元将軍」のドナルド・モファット(1930年生まれ)がレストランで死ぬ。次に、長年にわたって使用人を務めてきたマリオン・ロス(1928年生まれ)が病気で死ぬ。最後にシャーリー・マクレーン(1934年生まれ)本人が病気で死ぬのだが、最後まで死ななかった、あるいは死ぬところが映されなかったのが、隣人のベン・ジョンソン(1918年生まれ)である。ところが、このベン・ジョンソンは本作の公開前に本当に死んでしまったのだ。途中で死んじゃったので、死ぬシーンが撮れなかったんではないかと勘繰りたくなる、尻切れとんぼみたいな映画からの退場のしかたをする。

 ちなみにこのベン・ジョンソンは、そう、あの西部劇のスターの、後にサム・ペキンパーの映画の常連となった彼である、同じ年にTVムービーがあるが、これが実質上の遺作だと考えてよいだろう。マリオン・ロスはTVを中心に活躍している役者だが、キャリアの初期には『グレン・ミラー物語』とか『麗しのサブリナ』とか『先生のお気に入り』に端役ながら出演している人。ドナルド・モファットは、やたらよく見かけるので大量の映画に出演しているのかと思ったが、フィルモグラフィーを見ると映画の出演はそれほど多くなく、単に私が1980年代以降の彼の出演作品をほとんどすべて見ているというだけのことだった。良質な映画の比率が驚くほど高い。

 そういうわけで、話の筋は完全に見えた。これは、『マグノリアの花たち』の登場人物たちの2〜30年後の話なのである(あの映画でも、サリー・フィールドが娘のジュリア・ロバーツを病気で亡くし、孫が(1人だけだが)残された)。この映画は、『愛と追憶の日々』のふりをしながらも、実は『マグノリアの花たち』の続篇である。

2000/10/10

IMDBの該当ページへ

検索ページへ 目次へ 前へ 次へ