カリートの道

Carlito's Way

Brian De Palma / Al Pacino,Sean Penn,Penelope Ann Miller / 1993

★★★★

これはきれいな映画だった

 ブライアン・デ・パーマ(『ミッション・トゥ・マーズ』『スネーク・アイズ』)の落ち穂拾い。えらいものを見逃していた。

 アル・パチーノ(『ディアボロス/悪魔の扉』)演じるヒスパニック系の大物ドラッグ・ディーラー(キューバ系だと思われる。映画の中では、イタリア系マフィアの登場人物に、「こいつイタリア人に見えるだろ?」みたいなセリフを言わせていた)が、暗黒街(懐かしい言葉だ)から足を洗い、恋人のペネロープ・アン・ミラー(『リトルシティ/恋人たちの選択』『レリック』)と一緒にバハマでレンタル・カー屋を開くという夢を抱くが、友人の弁護士ショーン・ペン(『シン・レッド・ライン』『ゲーム』)とのしがらみもあって、なかなか足を洗えない。

 この「暗黒街」という言葉が非常に良く似合う、クラシカルな雰囲気を持つ映画だった。『ゴッドファーザー』よりも前のギャング映画を狙っており、コンテンポラリーなものとしてはちょっとセンチメンタルに過ぎるかもしれないが、あと20年ほどしてそういう弁別ができなくなったころには、古典的話法を使った傑作と評価されるようになるかもしれない。特に、11時半の汽車が出るまでに駅にたどり着かなくてはならないという、呆然とするほど1940年代的とでもいうべき設定の中で、長回しを多用した映像でサスペンスを盛り上げていくクライマックスの部分は、デ・パーマがこれまでに作ったシーケンスのなかで最高傑作の部類に入るのではないかと思う。私はブライアン・デ・パーマのこけおどしの要素が大嫌いだったのだが、この前後の『虚栄のかがり火』(1990)、『カジュアリティーズ』(1989)を含めた何本かが、嫌味なところがきれいに抜けた好感の持てる映画になっていることは認めざるをえない。この次の『ミッション・インポッシブル』(1996)以降は急激にダメになっているようだが。

 この映画に対するアル・パチーノの貢献は、いくら賞讃しても足りない。アル・パチーノは、映画界における地位の向上もあって、どんな役柄であっても「大物」の雰囲気を持たされることが多いように思うが、この映画では「元・大物」の微妙な立場が、彼にしては抑えた演技できれいに描き出されている。まわりからの評価と自分の主観的なあり方の食い違いに違和感がある。それを必死に支えていたのが破綻した後の、最後のクライマックスの生き残りをかけた必死の逃走シーンにリアリティを与えている。

 ペネロープ・アン・ミラーは、ドラッグ・ディーラーの恋人のダンサーというこれまた古典的な役柄を美しく演じている。上半身のヌード・シーンに下品さが微塵もないところが、この映画の古典性を強調している。

 コカイン漬けの弁護士を演じるショーン・ペンは、途中までこの人がショーン・ペンであることがわからなかったほどの化け方。入念な役作りをしていることを気づかせないところが、この人の力量である。

2000/10/10

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