氷の接吻

Eye of the Beholder

Stephan Elliott / Ewan McGregor,Ashley Judd,Jason Priestley,Genevieve Bujold / 1999

★★★★

これは魅力的な映画だった

 監督のステファン・エリオットは『プリシラ』が有名になったオーストラリア出身の人。この映画は悪い評判しか聞こえてこなかったが、見てみるとどちらかといえば「非常に良い」映画だった。

 英国大使館付きの情報部員(なのか何なのかよくわからない)ユアン・マクレガー(『Emmaエマ』『リトル・ヴォイス』『ナイト・ウォッチ』『普通じゃない』)が、監視活動中に連続殺人鬼のアシュレイ・ジャッド(『サイモン・バーチ』『ノーマ・ジーンとマリリン』『コレクター』)を発見し、それが彼のobsessionとなるという話。現代的なハイテクの小道具を使いながらも、それを濫用することなく、古典的な映画的話法でストーリーを展開させていく好感の持てる作りだった。このあたりのバランスの取り方に趣味の良さを感じた。

 この映画の凄いところは、ユアン・マクレガーの側ではアシュレイ・ジャッドを追いかける動機がよくわからず、アシュレイ・ジャッドの側では人を殺す動機がよくわからないところにある。これは、その追いかけ方と殺し方に一貫性がない、つまりどちらも何か確信を持ってそれを行っている感じがしないことから来ている。ともに訳のわからないものに翻弄されながら、アメリカ国内のあちこちを流浪する2人の姿はとても脆く、その脆さにのっぴきならない色気がある。

 私はユアン・マクレガーという人をとりたてて好きではないのだが、この映画の彼ははまり役だった。原作では、アシュレイ・ジャッドの父親の世代の中年男として設定されているそうだが(父親を失った娘と、娘を失った父親という関係がより強調される)、この映画のユアン・マクレガーはこれで必要十分である。アシュレイ・ジャッドは、まあ美しいだけで許される。天然さがキャラクターの複雑さに貢献しているというのは好意的な見方で、人によってはたとえば「キム・ノヴァクほどじゃない」と言う人もいるだろうが、私はこれで満足した。いくつかどっきりするほど魅力的な場面がある一方、かなりの期間は普通の人に見える。それが、このキャラクターの神秘性の由縁なのである、ということなのかどうなのかよくわからない。

 ジュヌヴィエーヴ・ビジョルドが小さい(しかし重要な)役で出演している。凄い存在感。

2000/10/29

IMDBの該当ページへ

検索ページへ 目次へ 前へ 次へ